NECの「パソリンク」と言えば、モバイルバックホールの分野で世界トップクラスの出荷実績をほこる製品だ(関連記事:世界中の携帯電話システムを支えるNECの「パソリンク」)。マイクロ波送受信部と変復調部で構成。特に固定回線のインフラが貧弱な新興国市場などにおいて、携帯基地局とコアネットワークを結ぶ回線(バックホール)用にこのパソリンクが多く利用されているという。

 そんなパソリンクの新商品としてNECは5月末、「iPASOLINK EX」を国内で販売開始した。iPASOLINK EXは、モバイルバックホール用途に加えて、新たにモバイルインフラのフロントホール市場も狙うという。フロントホールとは、モバイル基地局のベースバンドユニット(BBU:Base Band Unit)をネットワークセンターに集約するいわゆるC-RAN構成において、集約されたBBUと基地局アンテナ部分(RRU:Remote Radio Unit)とを結ぶネットワーク回線のことだ(関連記事:WDMを使って基地局の“フロントホール”回線を多重、ファーウェイが技術説明会)。

 昨今、モバイルトラフィックの急増対策としてスモールセルの取り組みが注目を集めている。ただしセルを小さくすればするほど基地局間で干渉が増す。干渉を低減するためには高度な同期が求められ、そのためにはベースバンドユニットを集約するC-RAN構成が都合がよい。そうなるとBBUとRRUを結ぶフロントホール回線の確保が必要になるが、固定回線を用意できるエリアは限られる。そこでマイクロ波の無線を使ったフロントホールの新需要があるのでは、というのがNECの狙いだ。

 実は日本国内において、このようなフロントホール需要に適した形でマイクロ波の制度改正が進められており(80GHz帯狭帯域の無線伝送システム)、今回の製品であるiPASOLINK EXはこの流れを見越したものという。パソリンクの現状と新たなフロントホール需要、そして制度改正の動向などについて、NECの野呂篤司モバイルワイヤレスソリューション事業部長代理と田中隆彦モバイルワイヤレスソリューション事業部シニアエキスパート(写真1)に聞いた。

(聞き手は堀越 功=日経コミュニケーション

パソリンクの現在の出荷状況を教えてほしい。

野呂部長代理:2014年4月に累計で約220万台の出荷を達成した。出荷しているのは海外市場が中心で、世界150カ国へ納入している。最も利用されているのは、やはりモバイルバックホール用途だ。携帯電話の全世界的な広がりとともに急速に需要が伸びてきた。

 パソリンクの強みは、世界最小・最軽量、そして低消費電力と、製品そのものがダントツである点だろう。他社製品と比べて信頼性が高い点も評価してもらっている。

写真1●NECの野呂篤司モバイルワイヤレスソリューション事業部長代理(左)と田中隆彦モバイルワイヤレスソリューション事業部シニアエキスパート
写真1●NECの野呂篤司モバイルワイヤレスソリューション事業部長代理(左)と田中隆彦モバイルワイヤレスソリューション事業部シニアエキスパート
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