一般社団法人のコンピュータソフトウェア協会(CSAJ)は2014年5月12日、データサイエンティストの定義を公表した。協会内の組織であるデータサイエンティスト育成研究会が取りまとめたもので、データサイエンティストを「ビジネスにおいて、競争優位性をもたらすために、データの収集・加工・分析に優れた専門性を発揮し、知見を引き出す人材」と定義付けている。定義の狙いについて、育成研究会で主査を務める昆 凡子氏(シムコス会長、写真1)と、メンバーの青木明彦氏(算法代表取締役、写真2)に聞いた。

(聞き手は西村 岳史=日経コンピュータ


どのような経緯でデータサイエンティストを定義することになったのですか。

写真1●シムコス会長の昆 凡子氏
写真1●シムコス会長の昆 凡子氏
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昆氏 最終的に「人材育成プログラム」を作るのが狙いです。IT産業にとってデータの活用は身近なものです。ところが、最近の事情をチェックしていると、米国に比べて遅れている面がある。これは人材の育成を急がなければならないと感じていました。

 以前からデータを分析、活用している方はいらっしゃいますが、これから莫大なニーズが生まれると想定しています。(このままではそのニーズの増加に)とても間に合わなくなってしまうということで、この4月から1年かけて、人材育成の枠組みを作ろうということになりました。

 今回の定義は、「IT産業の発展に寄与する人材の育成」がまず目的としてあって、その求める人材像という観点からのものです。そうした定義がないと、人材育成のプログラムがぶれてしまいますから。当初、「データサイエンティスト」という名称にするかは議論がありましたが、最近注目を浴びている呼び名で認知度が高いこともあり、このように決めました。

写真2●算法代表取締役の青木明彦氏
写真2●算法代表取締役の青木明彦氏
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青木氏 ほかの様々な定義を見て決めたのではなく、あくまでも我々の求める人材育成という目的のために定義しなければならなかった、ということですね。定義は普遍的なものではなく、今後の育成プログラムの枠組み作りの中で、過不足があれば変わってくると考えています。

やはり海外の方がデータ活用は進んでいるのでしょうか。

青木氏 そうですね。日本の企業は、データの活用にまだあまり目が向いていません。まだまだ価値を見い出せると思います。

昆氏 各企業は、実は「宝の山」を持っていて、それを掘り出して活用すればコスト削減や有意義な事業活動ができるにもかかわらず、眠らせたままということは多分にあるでしょうね。

具体的にはどのような人材を求めているのですか。

青木氏 複数のデータを一元的に捉えて、従来の業務改善だけでなく経営や事業に新たな価値を加えていく、そうした人材を考えています。そこでは報告書に盛り込んだ「データ活用プランニング」がキーワードになると思っています。販売履歴など従来の業務データに、新たなビッグデータあるいはオープンデータといったものを組み合わせてどう活用するかのプランを立てる。ベンダーとして、お客さんに対して競争優位性をもたらす提案ができるような人材とも言えます。