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 米ブロケードはStorage Area Network(SAN)から始まった企業だが、最近は様々なネットワーク関連技術を手がけている。こうした技術の戦略を担当するアンドリュー・カワード氏に、Software-Defined Networking(SDN)などのネットワークのソフトウエア化について聞いた。

(聞き手は大森 敏行=日経NETWORK


御社の最近の取り組みについて教えてほしい。

 直近の4年間は様々な新しい技術に投資してきた。その中の代表的なものがソフトウエアネットワーキングだ。こうした買収は、ソフトウエアルーター「Vyatta」を持つ米ビアッタを4年前に買収したときから始まっている。米リバーベッドテクノロジーのソフトウエアネットワーキング製品も買収した。

 従来はデータセンター向けに強みを持っていたが、企業ネットワーク向けにも製品ポートフォリオを拡大している。最近はWi-Fiの技術を持っている米ラッカス・ワイヤレスを買収した。

ネットワークのソフトウエア化はそんなに進んでいるのか。

 確かにソフトウエアネットワーキングは今後が楽しみな分野だが、実際には業界が期待していたほどには進んでいない。米アマゾン・ドット・コムや米ラックスペースといったクラウドサービスを提供している企業には採用が進んでいるが、企業ネットワークへの導入はあまり進んでいない。

企業でソフトウエアネットワーキングが進まない理由は何か。

 理由はいくつかあるが、そのうちの一つは「技術の選択肢が多すぎて、ユーザーが何を選んでいいのかわからない」ということだ。ある技術を使おうとしても、次に新しい技術が出てきて迷っていると導入が遅れてしまう。

 様々な技術はあるが、ベンダーが独自に提供しているものが多く、適用範囲も限られていることが多い。例えば、米シスコシステムズや米ジュニパーネットワークス、米ヴイエムウェアといったベンダーは垂直統合で独自仕様の技術を提供している。オープンなエコシステムを求めるユーザーの要望に応えられていない。

オープンなエコシステムとは?

 ユーザーが何を求めているかを調べているうちに興味深いことがわかった。「オープン」という言葉が持つ意味が変わってきているのだ。以前は、二つの異なったシステムが互いにやり取りできることをオープンと呼んでいた。例えば、シスコとブロケードのシステム同士がイーサネットやBGPなどのプロトコルでやり取りできるといったことだ。

 これに対し、今のオープンは「システムを他の製品に簡単に取り替えられる」ということを意味している。ホワイトボックススイッチを中心としたトレンドにもそうした背景がある。ユーザーが新しい製品を購入したら、面倒な変更を行うことなく、すぐに取り替えて使えることが求められている。考え方が変わってきているのだ

最近はネットワークの自動化も進んでいる。

 そうだ。ただ、自動化にはパラドックスがある。自動化するとユーザーが特定のベンダーのハードウエア、すなわちハードウエアに縛られてしまうのだ。このパラドックスを解決するには、自動化の機能をハードウエアからソフトウエアとして抽出する必要がある。そうしたソフトウエアこそが機能を発揮する時代になりつつある。

WANにSDNを適用して柔軟なWANを実現するSD-WANが注目されているが。

 現在のSD-WANの問題点は、サービスを利用するためにCPE(Customer Premises Equipment、ユーザー側に置く専用装置)が必要になることだ。ルーターやファイアウォールといった数多くの機器があるところに、また新しい機器が加わると管理が大変になり、ユーザーは嫌がることが多い。そこで、当社はCPEを仮想化してソフトウエアとして提供している。これにより、機器の管理の問題を解決できる。