富士ゼロックス株式会社の山﨑紅氏は、同社SE部に10年間在籍後、人材開発コンサルタントとして社会人や大学生の育成に従事。著書も多数あるが、新たに小学生・中学生向けの書籍を出版した。タイトルは『小学生からはじめる 考える力が身につく本-ロジカルシンキング-』と『小学生からはじめる 伝える力が身につく本-プレゼンテーション-』。いずれも社会人が競って学んでいる領域だが、なぜ小学生からなのか、どう強化したらよいのかを山﨑氏に聞いた。

(聞き手は齋藤 厚志=出版局)


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なぜ、小学生・中学生向けに「考える力」「伝える力」を教えようと思ったのですか?

 ひとことでいえば、「大人になってからでは遅い」と痛感したからです。

 私はこれまで、官公庁、民間企業、大学において、社会人や大学生の育成に携わってきました。ロジカルシンキング、問題発見・課題解決といった「考える力」を強化するプログラムや、文章作成、プレゼンテーション、コミュニケーションなどの「伝える力」を強化するプログラムは、多くの企業で積極的に導入されています。

 裏を返せば、社会人になっても、これらの能力が不足している人が多いということです。実際、多くの人が苦労して学んでいます。一方、優秀な人材に共通しているのは、やはり、考える力と伝える力の高さです。地頭がよいとか、話し上手だとか、持って生まれた能力のように思うかもしれませんが、子供のころから学び、体得してきた人は、そう見えるのではないでしょうか。

 考える力と伝える力は、何をするにも基本となる能力です。鍛えれば一生役に立ちます。文部科学省の学習指導要領(小中・高)では、生きる力を育むために思考力・判断力・表現力の強化が必要であるとしており、まさしくこれに相当します。いずれも一朝一夕で身に付くものではなく、さまざまな場面で、多くの経験を通して、体得していくものです。そこで、子供のころから学べるように、何か手助けがしたいと思いました。

なぜ「考える力」「伝える力」が大切なのですか?

 「考える力」と「伝える力」は、コンピュータでいえば、オペレーティング・システム(OS)です。専門知識や技能は、アプリケーションをインストールするように、必要になったときに追加すればよいですが、OSが能力不足では、処理結果に期待できません。私たちは、脳のほんの一部しか使っていないといいますから、与えられているCPUやメモリーは十分だとしても、アプリを使いこなして結果を出すには優れたOSが必要です。