企業ネットワークの分野で、今最も重要なテーマを五つ挙げるとしたら、「モバイル」「クラウド」「ソーシャル」「SDN」「IoT」が挙げられるだろう。米シスコシステムズで全企業向け製品を管理、担当するクリス・スペイン氏に、五つのテーマの最新動向について話を聞いた。(聞き手は高橋 健太郎=日経コンピュータ)

米シスコシステムズ エンタープライズ インフラストラクチャ & ソリューション グループ 担当副社長 クリス・スペイン氏
米シスコシステムズ エンタープライズ インフラストラクチャ & ソリューション グループ 担当副社長 クリス・スペイン氏
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今、企業ネットワークの分野で重要なテーマとは何でしょうか。

 すべての企業はネットワークを利用していますが、我々は顧客がどのようにネットワークを使ってビジネスを革新できるのか常に模索しています。企業のIT部門がコストセンターではなく、イノベーターであると認めてもらえるために、我々は何ができるのか考えているのです。

 「モバイル」「クラウド」「ソーシャル」「SDN」「IoT」の五つが、今ネットワークの分野で最も重要なテーマです。今年のInterop Tokyoの講演テーマにも選びました。これらは新しい収益源の創出、コスト削減、リスク低減を実現します。各テーマについて、順にお話しましょう。

では、まずモバイルについていかがでしょうか。

 802.11acの新製品を発表しました。いわゆる「Wave 2」のアクセスポイントです。Wave 2で新たに実装された新機能は、MU-MIMOによる複数のデバイスとの同時通信です。

 クライアントのデバイスとアクセスポイントの間の伝送速度は、11acで大幅にスピードアップしました。規格上では最高6.9Gビット/秒で、Wave 1の現行製品でも1.3Gビット/秒が可能です。ただし、Wave 1の従来型MIMOでは、アクセスポイントが同時に通信できるクライアントは1台のみでした。

 今後、企業にとってWave 2は重要となります。MU-MIMOによってアクセスポイントと複数クライアントが同時に通信できるようになれば、スマートフォンやタブレット端末など、より多くのデバイスを職場に持ち込んでも速度が低下しないからです。

 11nの製品がいくつかの世代に分かれていたのと同じように、11acのWave 2も数世代にわたるものと考えられています。現在のWave 2には搭載されていませんが、今後のWave 2で期待されるイノベーションは、より幅広い周波数帯域による通信です。現行の製品は80MHz幅ですが、それを2倍の160MHz幅に拡大します。ただ、実際の環境では、それだけ広い帯域を確保しずらいので、使い勝手は良くないでしょう。