タイで求人サービスなどを手掛けるTalentEx(Thailand)は、現地の人材会社とはひと味違う魅力を訴求し、同国の人材業界に新しい風を吹き込もうとしている。IT人材を対象とした「Job Talents」では、会社情報をリッチにして求人側と求職者側のミスマッチを減らす。日本語人材を対象とする「WakuWaku」は、独自に構築した求職者データベースを利用企業が検索、直接オファーが出せる仕組みを導入した。2016年夏には、人事管理クラウド「HappyHR」を投入。他の東南アジア各国への展開も視野に入れる。「人材採用に係る非効率を解消すれば、タイ企業はまだまだ伸びる」。TalentEx(Thailand)の共同創業者兼CEO(最高経営責任者)の越 陽二郎 氏は、こう力を込める。

(聞き手は岡部 一詩=日経コンピュータ


タイの人材業に参入したのはなぜか。

TalentEx(Thailand) 共同創業者兼CEO(最高経営責任者) 越 陽二郎 氏
TalentEx(Thailand) 共同創業者兼CEO(最高経営責任者) 越 陽二郎 氏
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 タイの採用文化には、非効率な面が少なくない。アナログな作業もかなり残っており、人事担当者が事務処理などに多大な労力を割いている。こうした状況を変えたかった。非効率さゆえに今まで10人しか選考対象にできなかったのが、30人、50人に増やすことができれば、優秀な人材を採用できる可能性は高まる。人材採用は企業活動の根幹だ。取り組む意義は大きい。

 非効率を招いている原因の一つは、求職者側と企業側との間でコミュニケーションが不足している点にある。「あなたの会社はどんな事業をしているのか」。面接に来たタイの求職者が、こう質問することが珍しくない。企業のことを事前に調べていかないことに特に負い目は感じないわけだ。

 履歴書を作成する習慣もあまりない。当社が2014年3月に始めた「Job Talents」というIT人材を対象としたリクルーティングサイトでは当初、求職者に履歴書をアップロードしてもらっていたが、顔写真だけを添付してくることも珍しくなかった。

 文化の差は仕方がない。ただ、求職者と企業が実際に会って初めて、お互いを知るような仕組みでは効率が悪いのは確か。求人を出す企業側にも足りない部分がある。どんな企業なのかといった情報を、求職者に向けて分かりやすく発信する工夫が欠けている場合が少なくない。

 「Job Talents」は、求人広告の掲載そのものは無料にし、タイでは珍しい採用報酬型にしている。スタートアップなどでも使いやすくしたつもりだ。そのうえで求人側には、写真や動画をアップして企業やチームの雰囲気が伝わりやすくするよう働きかけている。モバイルアプリを開発しているIT企業ならば、アプリの広告動画でも十分だ。