バックアップソリューションを手掛ける米アクロニス。2016年5月に、ブロックチェーン技術を利用してデータの整合性を監視するソリューションのプロトタイプの提供を開始し、6月には米国などでサーバーやネットワークの監視サービス(Acronis Monitoring Service)を始めた。ブロックチェーン技術採用の狙いや、監視サービスについて、VP Systems Management and Monitoringのニコライ・グレベンニコフ(Nikolay Grebennikov)氏に聞いた。

(聞き手は西村 岳史=日経コンピュータ


バックアップがセキュリティ対策に重要だ、というメッセージを継続して出している。その意味を改めて教えてほしい。

米アクロニス、VP Systems Management and Monitoringのニコライ・グレベンニコフ氏
米アクロニス、VP Systems Management and Monitoringのニコライ・グレベンニコフ氏
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 バックアップとセキュリティ対策には明確なつながりがある。既存のアンチウイルスソリューションは、いわゆる「感染」から守るものだ。一方で、マルウエアは進化しており、新しい攻撃手法が出てきている。

 マルウエアによる攻撃が成功したら、システムにあるデータを盗み出したり、改ざんしたりが容易にできるようになる。「ランサムウエア」と呼ばれる、ファイルを暗号化して「身代金」を用意するタイプのマルウエアは、日本を含めて様々な国で増えてきている。データの破壊や改ざんから守るためには、バックアップが必要だ。

ブロックチェーン技術はどのように使うのか。改ざんから守るにはバックアップだけで十分ではないのか。

 ブロックチェーンそのものは新しい技術ではない。数年にわたってビットコインなどで使われている。アクロニスも、以前からブロックチェーンに対して専任の研究チームを立ち上げてきた。

 ブロックチェーンは、データの改ざん防止、その結果としてのデータの整合性、信頼度の確保に有用だと考えている。5月に発表したのは、ブロックチェーンを利用しデータの整合性を監視するファイル同期・共有ソリューションのプロトタイプだ。

 現在、世界では毎日のようにデジタル資産が増えている。多数の人がかかわる資産ならば、誰が作って、所有して、変更したのかを把握しておく必要がある。ブロックチェーンを利用すると、データをシステムに入れたら消去できなくすることができる。更新するときも、ある一定のルールに基づいてシステムに参加している全員の合意がなければならない。

 複数の人が書き換える可能性がある一方で整合性や信頼度を維持し続けなければならないデータとしては、医療関連のデータや不動産の記録、法廷で使う証拠、警察が使う映像記録などが考えられる。「データが不正に書き換わっていないこと」を保証できるストレージがあれば、こうしたデータをデジタル化しやすくなる。

 ブロックチェーン技術を利用したアクロニスのストレージは、データの整合性をモニタリングすることなどができるようになる。我々が提供したのは(製品化が間近の)β版ではなく、あくまでもプロトタイプ。現在は様々な人に評価してもらっている段階だ。ブロックチェーンに取り組んでいる企業は金融関連が多い。バックアップソリューションを持っているベンダーでブロックチェーンに取り組んでいるのは我々だけだ。