2015年5月に開催した投資家向け会合で、新設計CPUの投入など新戦略を明らかにした米AMD。業務向けクライアント市場では「AMD PRO」ブランドを掲げて市場シェアの巻き返しを狙っている。AMD ワールドワイド・コマーシャルセールス担当コーポレートVPのデイビット・ベネット氏に、AMD PROの戦略について聞いた。

(聞き手は西村 岳史=日経コンピュータ


AMD PROの位置付けやターゲット、メリットを教えてほしい。

写真●AMD ワールドワイド・コマーシャルセールス担当コーポレートVP デイビット・ベネット氏
写真●AMD ワールドワイド・コマーシャルセールス担当コーポレートVP デイビット・ベネット氏
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 AMD PROは企業向けプロセッサのブランド名だ。AMD PROが付いたプロセッサは、通常の消費者(コンシューマー)向けプロセッサよりも、性能、信頼性、安定性が高い。プロセッサの製造段階でコンシューマー向けよりも厳しいテストを実施している。競合(インテル)に比べて、供給期間も2年と長い。

 AMD PROプロセッサをPCに採用するに当たり、PCメーカーに仕様などの条件は設けていない。ただ、低価格機(エントリーモデル)ではなく、プレミアムブランドとして使ってほしいと言っている。ラインアップで上位になるモデルだ。

 AMDの「APU」は、CPUの演算コアだけでなく、同じダイ(半導体本体)に統合したグラフィックス機能(GPU)も汎用的な演算に使って、連携して処理できる点が特徴の一つだ。「OpenCL」を使っているアプリケーションが高速になる。以前はOpenCLを使ったアプリケーションは少なかったが、現在はOSやWebブラウザー、アドビシステムズのアプリケーションなど、95%のユーザーが使っているソフトでOpenCLが利用されている。ベンチマークソフトだけでなく、実際のアプリケーションが速い。

 また、AMDが「第6世代APU」と呼んでいる新プロセッサ「Carrizo」は、より省電力になった。電力当たりの性能が高くなっているし、ノートPC向けならバッテリー駆動時間を延ばせるようになる。

 インテルの企業向けCPUと違う点として、クライアント管理技術がある。インテルは独自の管理技術を「vPro」として打ち出しているが、AMDはオープンスタンダードの「DASH(Desktop and mobile Architecture for System Hardware)」に対応している。インテルとは異なり、AMDはプロセッサのラインアップで利用できる管理機能に差を付けていない。vProはインテルの一部の製品でしか使えないが、AMDは安価な「A4」プロセッサでも、フルの機能が使えるようにしている。

AMD PROは広がっているのか?

 AMD PROは、日本では、日本ヒューレット・パッカード(HP)の「Elite」シリーズや、レノボ・ジャパンのデスクトップPC「M79」で採用されている。いずれも期待以上の台数が売れている。

 AMDとしてはもっとメーカーに採用してもらいたい。しかし、ここ数年は企業向けクライアントPCにはフォーカスしていなかったので、いきなり採用を広げるのは難しかった。現在は、社内の体制を変えて、企業向けクライアントPCへの注力も明確にしている。