米グーグルが開発するWebブラウザー「Google Chrome」。2016年5月、米ネット・アプリケーションズが発表したPC向けブラウザーの世界シェア調査で、米マイクロソフトの「Internet Explorer(IE)」を抜いて、初めて首位に立った。Chromeの開発方針や現在注力しているポイント、知られざる「Edge」チームとの交流などについて、Chromeの製品開発を統括するバイス・プレジデントのラフル・ロイ-チョウドリ氏に聞いた。
ネット・アプリケーションズによる「ChromeのシェアがIEを上回った」との調査結果は、日本でも話題になった。この結果をどう見ているか。
ロイ-チョウドリ氏 Chromeは誕生以来、三つの原則を追求してきた。「Speed(速さ)」「Simplicity(シンプルさ)」「Security(安全性)」だ。ユーザーに対しても、Webコンテンツの開発者に対しても、この三つを提供できるように努力してきた。
この三つの原則が評価され、今回の結果に至ったのではないかと受け止めている。現在Chromeには、モバイルだけでも月間10億人のユーザーがいる。50を超えるバージョンアップを重ね、開発スタッフも増えたが、核となる原則は今も変わっていない(画面1)。
個人ユーザーだけでなく、企業ユーザーにも広く使っていただいている。企業ユーザーにとっても、Speed/Simplicity/Securityの三つの原則は意義がある。またChromeはここ数年、グループポリシーなど企業向けの機能も強化してきている。
Chromeの開発に当たって、今、特に注力しているテーマは何か。
ロイ-チョウドリ氏 スマートフォンなどのモバイル端末向けChromeの改良だ。モバイル端末にはPCとは異なる特性があり、新たな工夫が求められる。
例えば、モバイル端末ではタッチ操作でChromeを使う。画面のスクロール一つとっても、ユーザーのタッチに素早く反応する必要がある。
スクロール機能自体はPC向けChromeにもあるが、操作にはマウスが使われる。ホイールで画面の動きを制御するマウスなら、高速なスクロールも容易だ。だがタッチ操作で高速なスクロールをしようとすると、とても難しい。ユーザーの指の動きに合わせて、ストレスなくスムーズなスクロールを実現するには、高度な技術が求められる。こうしたごくシンプルな操作でも、端末がモバイルになった途端に技術的なハードルはぐっと上がる。
ネットワークをめぐる問題もある。デスクトップPCなら常に有線でネットワークに接続されているが、モバイルでは頻繁にネットワークが切れる。完全にオフラインにならなかったとしても、ほんの数分の間にネットワーク状況が良好な状態からつながりにくい状態に変わったりする。