通信事業者のインフラ整備を担う通信建設業者のうち、協和エクシオやコムシスホールディングと並び、業界3強の一角を占めるのが、ミライト・ホールディングスだ。携帯大手各社の旺盛なネットワークへの設備投資を受けて、2012年度から3期連続で増収増益を達成している。しかし2016年5月11日に発表した2015年度の通期決算では、売上高は前年同期比5%減の2695億円、営業利益は同56.7%減の61億円と急ブレーキがかかった。携帯大手各社のネットワーク投資が一段落し、工事が減少しているからだ。そんな中、同社は非キャリア事業を伸ばすべく、オリックスと共同で2015年10月に新会社ミライト・エックスを設立した。通信建設業者を取り巻く状況と新会社について、ミライト・エックスの柳澤繁代表取締役社長に聞いた。

(聞き手は堀越 功=日経コミュニケーション


ミライト・エックスの柳澤繁代表取締役社長。ミライトの取締役常務執行役員も務める。
ミライト・エックスの柳澤繁代表取締役社長。ミライトの取締役常務執行役員も務める。
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通信建設業者を取り巻く状況について教えてほしい。

 これまで通信建設業者は、携帯大手各社がLTEネットワークのエリアを拡大し基地局工事の案件が多く発生したために、収益を大きく伸ばせた。しかし2015年度は、モバイルネットワークの工事案件が減少し、大幅な減益を余儀なくされた。これからしばらくはモバイル分野の工事案件は一段落すると予想され、通信建設業者は大手3社ともこのままでは収支が厳しくなっていくだろう。業界全体の課題といえる。

新会社ミライト・エックスの設立目的、事業範囲を教えてほしい。

 ミライトグループとしては、キャリア関連以外のビジネスとして、太陽光や蓄電池分野の設置・工事などを手掛ける環境・社会イノベーション事業、企業向けのPBXやサーバーなどの構築・工事を手掛けるICTソリューション事業も推進している。ミライト・エックスは、環境・社会イノベーション分野で、太陽光や蓄電池分野の設置・工事を手掛ける会社だ。

 過去3年間において、オリックスが住宅市場で展開している太陽光・蓄電池システムの設置などを当社が手掛け、かなりの工事を担当した。そんな中、オリックスとの間で全国での太陽光・蓄電池システムの設置・販売体制をより強化したいという話が立ち上がった。当社としても非キャリアのB2B2C事業を伸ばしたい考えがあったことから、オリックスが33%とミライトが66%出資する形で、2015年10月にミライト・エックスを設立した。

 ミライト・エックスは、ミライトの100%子会社であるIPテクノサービスをベースに商号変更した。IPテクノサービスは、家庭用パソコンの設定などのビジネスを展開していた企業で、工事の受け付けや手配、サポートに対応するシステムを持つ。こちらを家庭用蓄電池の設置など向けに活用する。

 IPテクノサービスには1000名ほどのフィールドスタッフがいるが、パソコン設定のビジネスは減少している。この人的リソースを蓄電池システム分野へと割り振る。蓄電池の設置工事自体は、各地域の協力会社との協力体制によって進める。

現在の御社の住宅市場向け太陽光・蓄電池の設置ビジネスの売上げ規模は。

 2015年度だけでも4000戸ほどの蓄電池の設置を行った。単価が高いので既に年間売上高で50億円ほどのビジネスになっている。

今年度の蓄電池設置ビジネスの売上げ目標、またミライトグループ全体の非キャリア事業の目標も教えてほしい。

 2016年度の蓄電池設置ビジネスは、15年度の倍の8000戸設置を目指したい。売上高は130億円と倍増以上が目標だ。ミライトグループ全体の非キャリア事業は、2020年度までに売上高の50%を占めるように目指したい。