スマートフォンの普及を背景に広がっているのがスマホECサイト。事業者にとって鍵になるのが、ECサイトを訪れた客を確実に購買につなげる「接客」や「販促」だ。ベンチャー企業Socket(ソケット)はECサイト利用者に応じたクーポン発行やチャット形式の顧客サポートといった販促支援サービスを手がけ、東急ハンズや丸善ジュンク堂書店などのスマホECサイトに導入実績を持つ。安藤祐輔社長(写真1)にスマホECが抱える課題と同社が提供するサービスの意義を聞いた。

(聞き手は玉置 亮太=日経コンピュータ


現状のスマホ向けECにはどんな課題があるのでしょうか。

Socket代表取締役の安藤祐輔氏
Socket代表取締役の安藤祐輔氏
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 ECサイトに利用者を呼び込む「集客」に注力する事業者が多い一方で、サイトを訪れた利用者に対する「販促」が手薄になっていることだ。

 現在のECサイトは、いわば「焼き畑農業」に近いと感じている。インターネット広告やFacebookページを使うことで、ECサイトに集客することはできる。最初こそ広告掲載サイトからお客が訪れ、売り上げが上がるだろうが、時間が経つにつれて落ちていく。だから別のサイトに広告を掲載し、そこから集客する。そしてまた別のサイトに広告を…、とひたすら集客を繰り返す。

 集客はもちろん重要だが、お客を呼び込んだECサイト上でも客の興味や関心を喚起したり適切なサポートを提供したりする。そして購買率を高めたりリピート客にしたり、といった販促をセットで実施すべきだ。

図●「Flipdesk」の紹介サイト
図●「Flipdesk」の紹介サイト
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 こうした考えの下、2014年5月に提供を始めたスマホ販促ソリューションが「Flipdesk(フリップデスク)」だ()。

 当初の機能はスマホECサイトにチャット機能を埋め込み、サイトの担当者が客と対話しながら接客できるというもの。これを基に、スマホ画面上にポップアップ(浮かび上がる)形式でバナー広告や割引クーポンを表示するなど、販促機能を充実させてきた。

ポップアップ方式の利点は何ですか。

 サイトを訪れる利用者に対する利点は、スマホの小さな画面でも印象に残るクーポンを見せられることだ。画面中の一部にバナーやクーポンを埋め込む従来方式では、小さい上に画面をスクロールすればすぐに流れていってしまう。ポップアップ方式ならば確実に目に留まる。

 ECサイトを運営する事業者にとっての利点は、導入が楽なこと。ECサイトのHTMLにタグを1文追加するだけで済む。従来方式はバナー広告を表示する位置を詳細に指定するなど手間がかかる。

肝心の効果はどうでしょう。

 フリップデスクを導入した企業の実績で言えば、クリック率は従来のバナー広告の3倍、購買に至る「コンバージョンレート」は2~3割は高まっている。

 スマホECでの購買比率は今後ますます高まる。フリップデスクの料金体系は月額5000円からと安価だ(初期費用は別)。導入の容易さと併せて、事業者には十分に利点があると自負している。

今後の注力ポイントは何ですか。

 スマホEC事業者のサイト運用をサポートする機能を充実させる。サイトへのアクセス状況の解析やレポート、広告に投じた費用と集客や購買につながった効果の分析といったものだ。

 具体策としてこの4月30日に、ECサイトの「トレーディングデスク」サービスを提供するエスワンオーインタラクティブと提携した。トレーディングデスクとはネット広告配信の設定と実行、効果の分析、レポートまでを提供する機能のこと。フリップデスクの導入企業は、ECサイトの集客や販促の実施結果とその成果を、同一のレポートで閲覧できる。トレーディングデスク機能を皮切りに、今後も運用サポート機能の拡充に力を注いでいく。