米ゼネラル・エレクトリック(GE)は、産業用機器をインターネットにつなげるIoT(インターネット・オブ・シングズ)基盤「Predix」を提供している。Predixを担当するGEデジタルは2016年、Predixを含むソフト事業において、受注ベースで前年比20%の成長を遂げた。同ソフト事業は2017年も同20%の成長を見込み、世界で52億ドルの受注を目指す。

 

 Predix事業の日本市場を含めた見通しについて、GEのCDO(最高デジタル責任者)とGEデジタルのCEO(最高経営責任者)を兼任するビル・ルー氏が報道関係者向けグループインタビューで語った。


Predix事業の現況は。

写真●GEのCDO(最高デジタル責任者)とGEデジタルのCEOを兼任するビル・ルー氏
写真●GEのCDO(最高デジタル責任者)とGEデジタルのCEOを兼任するビル・ルー氏
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 Predixの提供は2016年2月に開始した。PredixとPredixに関する全てのアプリケーションは既に4億ドルの売り上げを達成しており、2017年度は10億ドルを目指している。現在、開発者はおよそ2万5000人、パートナー企業は650社にのぼる。

Predixのパートナー企業とは。

 650社のパートナー企業は4種類に分類できる。一つは、米デロイトデジタルなどのコンサルティング会社だ。二つめはシステムインテグレーター(SI)。三つめは米インテルなどの技術パートナーで、相互に技術を活用する企業だ。四つめは独立したソフトウエア企業となる。日本のパートナー企業で言えば、NECはPredixのSIでもあり技術パートナーでもある。

 NECは優秀なパートナーだ。システムインテグレーション技術とハードウエア製品を持ち、そこにGEのソフトウエアを搭載して顧客に提供している。Predix向けのアプリケーショも開発している。

 他にも、東芝、LIXIL(リクシル)、東京電力、東洋エンジニアリングなどとのパートナーシップも実現している。

Predixの顧客は、何を求めているのか。

 製造業の顧客は、生産性を上げる新しいツールとしてPredixを必要としている。産業機器をセンシングし、故障を事前に予測するといった用途だ。GEはPredixに新たな技術を組み込む際、まず社内で検証し、有効性を証明できたものを顧客に提供している。このアプローチのおかげで、我々は顧客に選ばれている。

 我々の顧客は、設計から製造、運用までの全てをネットワークでつなぎたいと考えている。GEはこれを「デジタルスレッド」と名付け、それを実現するPredixの機能を提供している。デジタルスレッドにより、生産機械からの情報収集や生産性の向上を実現できる。

Predixの中で、機械学習などの人工知能(AI)技術はどう活用しているか。

 産業機器から集まるデータのパターンをAIで分析している。産業機器のIoTがコンシューマ向けIoTと異なるのは、まずエッジ側である程度のデータ処理を行う点だ。処理済みデータをさらにクラウドで分析し、最後にエッジ側へ再びデータを戻すことになる。

 重要なのが「デジタルツイン」だ。デジタルツインとは、製造現場で起きている事象をバーチャルで再現する手法のことだ。機械の挙動を再現するシミュレーションモデルをつくり、データを収集しながらモデルを更新する。デジタルツインにより、機械の状態をモニターして故障前の早い段階でメンテナンスしたり、生産効率を高めたりできる。

 デジタルツインはすでに多くのGEの製品で稼働している。2016年11月に深層学習(ディープラーニング)の技術を持つ米ワイズ・アイオー(Wise.io)を買収した。これにより、機械学習を応用したデジタルツインを実現できた。顧客はPredix上でデジタルツインのツールを利用できる。すでに、デジタルツインによる発電所のシミュレーションが稼働している。

GEは日本市場をどう見るか。

 2015年の初めに私が来日したとき、GEデジタルの担当者と日本市場の重要性について認識を共有し、必要なリソースを振り向けた。いま振り返ると、その判断は間違っていなかった。2017年度は日本のビジネス規模を3倍にするのが目標だが、第一四半期でその半分を達成している。

 2015年当時は日本にGEデジタルの中核チームはなかったが、今では20人にまで成長した。加えて、それぞれの事業分野にもデジタル担当者を配置している。電力、航空機、ガスなどの事業を合わせると、日本のデジタル担当者は約50人となる。GEがデジタル事業で日本市場を重視している表れだ。