国内シェアトップのWebフィルタリングソフト「i-FILTER」などを提供するデジタルアーツ。誤送信対策機能などを盛り込んだメールセキュリティソフト「m-FILTER」やファイルの暗号化や追跡消去が可能な情報漏洩対策ソフト「FinalCode」も手掛けることでも知られる。昨今は、セキュリティ大手ファイア・アイ日本法人やクラウドストレージの米BOXなどとの製品連携を相次ぎ発表し、海外市場への本格参入も表明した。「性善説だけでセキュリティは守れない」と話す同社社長の道具登志夫氏に市場動向と2016年の事業戦略について聞いた。

(聞き手は井上 英明=日経コンピュータ


セキュリティ製品の販売動向は

デジタルアーツ社長 道具登志夫氏
デジタルアーツ社長 道具登志夫氏
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 2015年下期から世の中の流れが変わり、ようやく情報セキュリティ市場に火が付いてきた。ベネッセ(ホールディングスの情報漏洩事件)に続き、日本年金機構(の年金情報流出事案)が大きく影響しているだろう。セキュリティ大手の経営層が「もうウイルス対策ソフトは役に立たない」と発言したように、サイバー攻撃は100%防げない。企業や団体を含め外部からのサイバー攻撃を社会的にどう守るか、とりわけ社内の重要情報をどう守るかに目が向いてきた。

 当社でも2015年上半期の終わりぐらいからi-FILTERが前年比で20%近く売れるようになり、m-FILTERも3~4割伸びた。2014年から本格販売し始めたFinalCodeは分母が小さいものの、5倍も売れるようになった。

FinalCodeの成長率が著しい

 サイバー攻撃での情報漏洩に注目が集まったが、実際に情報が漏洩するのは内部犯行が多く、情報漏洩の7割は内部からという調査もある。外部からのサイバー攻撃対策も重要だが、喫緊の課題としては内部犯行の対策の整備が進んでいることが背景の一つだろう。  特に日本人は性善説に立ってきていた。社員は悪いことをしない、会社に対して何か悪影響を及ぼすことはしないと信じてきたが、それはもはや通用しなくなってきていると気が付き始めている。社員が何かしようとしても、何もできない状態におくべきだと考え、対策を進めてきている。

 販売方法を変えたのも売上増の要因の一つだろう。当社や販売代理店は主に中小企業を顧客にしていた。i-FILTERは学校からの引き合いが多かったため、販売戦略の中心はどうしても学校に物を売る企業、すなわち中小企業向けとなりがちだった。

 i-FILTERは単価が安いため、大企業を顧客に抱える大手IT企業にはあまり注力してもらえなかった“壁”も正直あった。その点、FinalCodeは単価が高い。開発作業を伴って継続的な売り上げにもつながる。FinalCodeの本格販売に合わせ、ラージアカウント(大規模顧客)を開拓していこうとチャレンジしてきた。その結果、国内の大手IT企業が販売してくれるようになり、さらに米boxとのグローバルなアライアンスも出てきた。戦略としては非常にうまく進んでいる。

 ただ、案件規模としてはまだまだ小さいのが現状。大企業はいきなり5万本、10万本とは買わず、まずは1事業部や子会社からスモールスタートするからだ。数件の大規模顧客を獲得したが、(大規模顧客での全面展開によって)5倍になったわけではない。