欧州SAPは23年ぶりに全面刷新したERP(統合基幹業務システム)製品「S/4HANA(SAP Business Suite 4 SAP HANA)」で、データベース(DB)として自社の「HANA」だけを採用する方針を打ち出し話題を集めた(関連記事:SAPが23年ぶりにERP製品を全面刷新、「HANA」を基盤にSaaS統合)。だが、SAPとDB関連の協業を15年以上担当してきた米オラクルのカップラー氏は「多くの大手顧客が望む以上、S/4HANAは当社のDBを採用するようになる」とみる。

(聞き手は田中 淳=日経コンピュータ

SAPは、S/4HANAで自社のHANAだけをDB基盤として採用する方針を打ち出した。オラクルに対して大きな衝撃を与えたのでは?

米オラクル SAPアカウント担当 バイスプレジデント ゲルハルト・カップラー氏
米オラクル SAPアカウント担当 バイスプレジデント ゲルハルト・カップラー氏
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 まず、事実を確認しておこう。2015年に入り、SAPとオラクルは当社製品の再販(リセール)に関する契約を延長することで合意した。SAPの顧客は2017年12月31日まで、SAP製ビジネスアプリケーション向けオラクル製品のライセンスをSAPから購入できる。SAP製品とオラクル製品に関する統合サポートはさらに2年間、2019年12月31日まで提供される。

今後10年にわたり、「Business Suite 7」をサポート

 SAPはこれに先立ち、2014年10月に既存製品「SAP Business Suite」の最新版である「Business Suite 7」のサポート終了時期を2025年へと延長した。従来は2020年までとしていたが、顧客から圧力がかかり、サポート期間を延ばしたわけだ。2025年は今から10年後で、ITの世界では1世紀分にも相当するといえる。さらに2025年以降にサポート期間を延ばすこともあり得ると思う。

 SAPと我々の関係が始まったのは「R/3」の時代である1992年からで、現在も中・大規模のSAPユーザーの80~85%がオラクル製品を採用している(関連記事:共通顧客は3万社以上、「SAPの顧客にとってオラクルDBこそ主要な選択肢」)。これまでも、そして今後もSAPとオラクルは重要な関係であり続ける。

しかし、SAPはS/4HANAでオラクルのDBをサポートするとは表明していない。

 その点について、私は楽観的に考えている。S/4HANAはオラクル製品向けにも提供されるとみている。多くの顧客がそれを望んでいるからだ。当社製品だけでなく、現状のBusiness Suiteと同様に、他社のDBも利用できるようになるだろう。