クラウド構築ソフトウエア「OpenStack」に関連するスタートアップ(ベンチャー企業)の中でも勢いがあると見なされているのが米ミランティス(Mirantis)だ。2014年10月に1億ドルの資金調達をした同社は、2015年から日本でのビジネスを本格化した。共同創業者でCMO(最高マーケティング責任者)を務めるボリス・レンスキー(Boris Renski)氏(写真1)に話を聞いた。(聞き手は中田 敦=日経コンピュータ)

ミランティスは、OpenStackビジネスを始めるにあたって、ディストリビューション(検証済みパッケージ)の販売ではなく、構築支援のサービスから始めた会社だと聞きました。

 そうだ。OpenStackはこれからのITプラットフォームを支える重要なソフトウエアだが、ソフト自体はとても複雑で、導入も大変だ。当社はユーザー企業に対して、OpenStackのインストールやエンジニアのトレーニングなど「プロフェッショナルサービス」を提供することに特化している。

写真●米ミランティス(Mirantis)の共同創業者でCMO(最高マーケティング責任者)を務めるボリス・レンスキー(Boris Renski)氏
写真●米ミランティス(Mirantis)の共同創業者でCMO(最高マーケティング責任者)を務めるボリス・レンスキー(Boris Renski)氏
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 最も重視している顧客は、システム管理者だ。ユーザー企業がITインフラの何に悩んでいるのかを彼らから聞き出し、適切なソリューションを提供する。

 次に重視しているのはアプリケーション開発者だ。今の開発者は「Amazon Web Services(AWS)」が大好きで、可能であればAWSを使いたいと考えている。しかし会社のコンプライアンスの方針などで、AWSを利用できないという開発者も少なくない。AWSと同じエクスペリエンス(ユーザー体験)を、オンプレミスでも実現しようとするソフトがOpenStackとなる。

 CIO(最高情報責任者)やITインフラ担当重役はその次だ。大企業のCIOの中でも先進的な人々は、スタートアップ(ベンチャー企業)がやっているような高速なアジャイル開発を、大企業の中でも実現したいと思い始めている。そのためにはAWSやOpenStackのような構成を柔軟に変更できる、アジャイル開発に向いたITインフラが必要だ。

なぜ、プロフェッショナルサービスからビジネスを始めようと考えたのですか。

 当社がOpenStackビジネスを始めた2011年頃は、投資家から「OpenStackのディストリビューション販売をやるべきだ」というプレッシャーを受けることがよくあった。しかし、当社は顧客のことだけを考えて、自分たちのビジネスの方向を決めた。