スイッチやルーターといったネットワーク機器を手掛ける米ブロケード コミュニケーションズ システムズ。同社は「New IP」というキーワードを掲げ、SDN(ソフトウエア・デファインド・ネットワーキング)やNFV(ネットワーク機能仮想化)などの技術開発を進めている。4月にはWi-Fi機器ベンダーの米ラッカスワイヤレスの買収を発表した。同社がネットワーキング企業として目指す戦略を、来日した同社CEO(最高経営責任者)のロイド・カーニー氏(写真)に聞いた。

(聞き手は中村 建助、高橋 健太郎、広田 望=日経コンピュータ


米ブロケード コミュニケーションズ システムズCEO(最高経営責任者)のロイド・カーニー氏
米ブロケード コミュニケーションズ システムズCEO(最高経営責任者)のロイド・カーニー氏
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ブロケードの業績と他社にない強みは。

 昨年のブロケードは売上収益、営業利益ともに最高を記録した。競合他社が日本での組織縮小を図る中、昨年も今年も人員採用を進めるための投資を行っている。

 今月発表した米ラッカスワイヤレスの買収も含めると、我々は無線LANのアクセスポイントからデータセンターまで技術を保有するネットワーキング企業となった。

 もちろん、似たような技術領域を保有する競合他社はある。競合他社がサーバーやストレージといった広範な展開を行う中で、ブロケードはネットワーキングにのみ焦点当てている。それが強みだ。

 ブロケードの買収履歴には経営方針が現れている。我々が獲得してきた技術は、エンド・ツー・エンドでソフトウエアベースの製品を作り上げることを目指している。

 ブロケードはネットワーキング企業としては唯一、携帯基地局からデータセンターのコア技術まで保有している。加えて、その全てでSDN(ソフトウエア・デファインド・ネットワーキング)、NFV(ネットワーク機能仮想化)の技術を保有している唯一の企業だ。

ブロケードの今後の戦略とは。

 今後の戦略でキーワードになるのは、モバイルのSDNとNFVのだ。

 確実にできる未来予想は非常に稀だが、世の中がモバイルに向かっているのは確実だ。東京、ニューヨーク、ブエノスアイレス、サンパウロ、どこもモバイルに向かっている。将来の通信はモバイルとワイヤレス通信の組み合わせが重要となる。

 効率の良いデータセンターは、SDNとNFVのネットワークによって実現していく。そもそも、米アマゾン・ドット・コム、米グーグル、米マイクロソフト、米IBMといった企業が保有するハイパースケールのデータセンターは、既にSDNとNFVによって構築されている。効率の良いデータセンターを構築するには、既存のハイパースケールなデータセンターに倣うのが必要だ。

 SDN、NFVを使ってデータセンターを構築するには、ソフトウエアベースのコントローラー、ルーター、ファイアウォール、ロードバランサーが必要になる。ブロケードはこれら製品を全てそろえている。

 既に我々の製品で効率の良いデータセンターを構築できる。今は次の技術開発にも着手している。次世代のネットワークに向けた開発対象は、モバイルとソフトウエアだ。そのためにラッカスを買収し、セルラー通信、モバイル通信、Wi-Fiの高い専門技術を手に入れた。

 我々は新しいネットワークの開発に必要な全ての専門性をそろえた、完璧な企業になった。新しいネットワークを「New IP」と呼んでいる。