シリコンバレーでは今、広告などコンシューマー(消費者向け)分野で活躍してきたエンジニアが、エンタープライズ分野で起業するケースが増えている。その1社が、都市交通の最適化システムを開発する米アーバンエンジンズ(Urban Engines)だ。

 同社はグーグルに10年間勤務し「AdSense」や「AdWords」の開発担当バイスプレジデントなどを歴任したシバ・シバクマール氏が起業した。電車やバスといった都市交通の問題点を分析するクラウドサービスを、自治体や鉄道・バス会社向けに販売している。同社の共同創業者でチーフサイエンティストを務めるバラジ・プラバカー氏(写真1)に話を聞いた。(聞き手は中田 敦=日経コンピュータ)。

写真1●米アーバンエンジンズ共同創業者でチーフサイエンティストを務めるバラジ・プラバカー氏
写真1●米アーバンエンジンズ共同創業者でチーフサイエンティストを務めるバラジ・プラバカー氏
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アーバンエンジンズは、どのような会社ですか。

 都市の人々の移動を効率化するプラットフォームを開発している。具体的には、交通機関の利用者データを分析することで、都市交通のボトルネックを見つけ出すクラウドサービス「Urban Engines」を、電車やバス、タクシーなどの運行会社に提供している。

どのような利用者データを分析するのですか。

 二つのデータを分析対象としている。一つは、交通機関の利用者がICカードで改札を通過した際の履歴データ。もう一つは、当社が利用者向けに無償で提供している、AR(拡張現実)を採用した都市交通案内スマートフォンアプリケーション(写真2)の利用履歴データだ。

写真2●アーバンエンジンズのスマートフォンアプリケーション
写真2●アーバンエンジンズのスマートフォンアプリケーション
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 この交通案内アプリケーションは、利用者がカメラで撮影する周辺の風景に、鉄道やバスの路線や車両の位置を重ね合わせて表示する。利用者は周囲の風景を見ながら、駅やバス停の場所や、自分が乗るべき車両を確認できるという仕組みだ。交通案内アプリケーションは現在、米国のアトランタやボストン、シカゴ、ロサンゼルス、ニューヨーク、サンフランシスコ、シアトル、ワシントンDCや、カナダのトロント、バンクーバーなど22都市で利用できる。

 ICカードの利用履歴は、電車なら電車、バスならバスで完結しており、利用者がどう電車やバスを乗り継いだか、エンド・ツー・エンドで分析できない。我々の交通案内アプリケーションの利用履歴を使うことで、複数の交通機関にまたがる利用状況を把握できるようになる。