米マイクロソフトと米アクセンチュアが2000年に合弁で設立した米アバナード。同社はマイクロソフト製品に特化したシステム構築サービスを手掛ける。米アバナードのアシーシ・クマール氏は、Chief Growth Officer(CGO、最高業績拡大責任者)兼デジタルリードとして、成長戦略や事業推進に加えデジタル製品を担当する。米マイクロソフトでも企業IT分野を担当していたクマール氏に、グローバルでのクラウドの動向やクラウドを軸とした同社の戦略などについて聞いた。
クラウドに関する企業の関心やMicrosoft Azureの採用動向などについて教えてほしい。
ここ数年で顧客の中に興味深い変化が起きている。現在、新規案件のほぼ100%でクラウドを活用するようになった。パブリッククラウドの中でもAzureを選択する顧客が増えている。
約2年前はクラウドの用途といえばIaaS(インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス)が中心だった。多くの企業はサーバーやストレージをクラウドに移行することで、コストを削減することを目的としていた。
最近ではアプリケーション自体をクラウドに載せようという動きに変わってきている。特に多いのがデジタルマーケティングの用途だ。デンマークのサイトコアなど、我々のパートナー企業と一緒にDMaaS(デジタルマーケティング・アズ・ア・サービス)として、デジタルマーケティングとWebコンテンツ管理のための統合的な製品やサービスを提供している。
既に日本通運や豪州の大手電力会社であるAGLなどが、DMaaS関連で我々の製品やサービスを採用している。デジタルマーケティングの分野ではAzureが他社のサービスを先行しているという認識だ。
企業におけるAzureの利点は何と考えるか。
拡張性と俊敏性だ。大規模なWebサイトを運営する企業にとっては、Azureの拡張性が役立つ。これまで大手企業でサーバーなどの購入から導入まで数カ月かかっていたのも、Azureを使うことですぐに開発に取りかかれる。
拡張性と俊敏性はAmazon Web Services(AWS)など、ほかのクラウドサービスの特徴でもある。Azureが他社のサービスと比べて特徴的なのは、オンプレミス(自社環境)とパブリッククラウドを組み合わせたハイブリッドクラウドに強みがある点だ。
例えばAzureにはオンプレミス環境とクラウド環境で動作する各業務アプリに、同じIDで認証できる「Azure Active Directory」などのサービスがある。
最終的にパブリッククラウドを最大限に活用しようとする企業であっても、オンプレミスからすぐにクラウドに移行できるわけではない。現実解としてハイブリッドクラウドの仕組みは必要で、その点でAzureの利用は有効だ。
Azureのサービスで顧客の人気が高いものはどれか。
前述のデジタルマーケティング関連のほかに、IoT(Internet of Things)向けサービスの「Azure IoT Suite」を活用した事例が多い。
米国のある鉱山採掘会社では、広大な採掘場に設置してあるブルドーザーなどの重機にセンサーを組み込み、監視カメラと合わせて重機の稼働状況をAzure上に集約している。
集約したデータを機械学習サービスの「Azure Machine Learning(Azure ML)」で分析し、現場監督者のモバイル端末に最適な重機の移動ルートなどを表示する。これにより、効率性や安全性が格段に向上した。