ソフトバンクモバイルは2014年10月、媒体社(メディア)向けの広告プラットフォーム事業(SSP:Supply Side Platform)を手掛けるジーニーとの資本・業務提携を発表した。ソフトバンクモバイルはジーニーと組み、ソフトバンクグループのインターネット広告事業を強化していくという。ジーニーの工藤智昭・代表取締役CEO(写真)に、提携の経緯や今後の事業展開などを聞いた。

(聞き手は榊原 康=日経コミュニケーション


写真●ジーニー 代表取締役CEO 工藤智昭氏。
写真●ジーニー 代表取締役CEO 工藤智昭氏。
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ソフトバンクモバイルと資本提携した経緯を知りたい。

 そもそも経営者としてソフトバンクの孫正義社長を尊敬しており、ソフトバンクアカデミア(孫社長の後継者育成機関)に参加していた。一方、携帯電話事業者がアドテク(広告技術)を強化する動きが進んでおり、KDDI(au)はスケールアウトを傘下に収めた(子会社のmedibaが2013年8月に買収、2014年10月にKDDIへ譲渡)。

 当社はもともと、ソフトバンクグループと取り引きがあり、もっとがっちり組もうという話になった。ソフトバンクは日本の企業にほとんど投資しないので、「異例中の異例」と聞いている。2014年10月に資本提携を結び、翌11月に本格的な協業を始めた。

 2015年2月には「ソフトバンクメディアマネタイゼーションサービス」と呼ぶ広告プラットフォーム(SSP)を開発した。ソフトバンクモバイルは今後、これをグループ各社のインターネットメディアに展開していく計画だ。ソフトバンクモバイルの各種アプリをはじめ、SBイノベンチャーの電子コミックアプリ「ハートコミックス」などに順次、導入を進めている。

ネット広告業界は新規参入や合従連衡が激しく、カオスマップという言葉の通り、混沌としたイメージがある。現在のポジションは。

 2014年7月に東証マザーズに上場したボヤージュ・グループが大手だが、直近で最も勢いがあるのは我々ではないか。広告表示回数は月400億回規模。業績は非開示だが、日本の売上高は前年度比2倍強の勢いで伸びている。

 アジアを中心に海外展開に力を入れており、シンガポールに子会社、ベトナムに拠点も設置した。トランスコスモスとのジョイントベンチャーで、マレーシアやインドネシア、タイにも営業拠点を置いている。

 取引先の数は現在、約5000社。このうち約1000社は東南アジアで、全体の売上高の約2割は海外が占める。今年はインドとインドネシアに注力したい。日本におけるシェアを上げつつ、海外でもアジアを中心にシェアを上げ、最終的には世界一を目指している。

競合他社に比べた強みは何か。

 一言で言えば、マネタイズ力になる。当社の事業は媒体社のウェブサイトやアプリに我々のプラットフォーム(SSP)を導入し、広告主(アドネットワークやDSPを含む)の入札を受けて媒体社の収益を最大化すること。

 マネタイズ力が強い理由は、広告主が多いから。我々のプラットフォームに入札するDSPやアドネットワークの数は、おそらく日本最大と自負している。オークション(競争入札)方式なので、(広告主が多いと)競合して単価も上がる。シンガポールなどにマーケティング拠点を置くグローバル企業は多く、これらの需要を取り込んでいる点も大きな強みだ。

 我々のプラットフォームは、媒体社のマネタイズに必要な様々な機能を取りそろえる。例えばウェブサイトをページ単位で読み込み、その内容に応じて広告出稿を制御できる「GAURL」(ガウル)。媒体社と広告主のどちらも意図しない広告の掲載や出稿を避けられ、「ブランドセーフティ」を保てる。

 このほか、時間や曜日、季節などで変動する広告需要に応じて最低入札価格を変える「ダイナミックフロアプライス」、媒体社が特定の広告主と直接取り引きできる「プライベートマーケットプレイス」などもある。後者は、広告主が需要期でも広告枠を確実に確保できるだけでなく、媒体社も安定的に取り引きできるメリットがある。

 媒体社の保有データ(属性情報や購買履歴など)と連動した広告配信を実現する「Private DMP」(Data Management Platform)の展開にも力を入れている。同じウェブサイトでも閲覧者の属性は多岐にわたる。Private DMPの導入でターゲティングを細分化したり、広告枠を属性に応じて値付けしたりできるようになる。