米アドビ システムズは「Adobe Summit 2017」の初日に当たる2016年3月22日(米国時間)に、「Adobe Experience Cloud」を発表しマイクロソフトと提携による最新情報を公開した。

 加えてアドビは、アドビの人工知能(AI)とマシンラーニングフレームワーク「Adobe Sensei」の最新情報を公開。エンタープライズ向けに新たな機能を追加したほか、パートナーとの連携も明らかにした。(発表内容はこちら)。

 Senseiは継続的に学習していくシステムで、常にデータおよびコンテンツを学習し続ける。AdobeはSenseiに、日本語の「教師」「マスター」「学習」という意味を込めているという。米アドビシステムズのAbhay Parasnis(アベイ・ パラスニス)エグゼクティブバイスプレジデント兼CTO(最高技術責任者)にグループインタビューし、Adobe Sensei及びマイクロソフトの提携について話を聞いた。

(記事構成は松本 敏明=ITproマーケティング、質問はほかの記者のものも含む)



米アドビシステムズのAbhay Parasnis(アベイ・ パラスニス)エグゼクティブバイスプレジデント兼CTO(最高技術責任者)
米アドビシステムズのAbhay Parasnis(アベイ・ パラスニス)エグゼクティブバイスプレジデント兼CTO(最高技術責任者)
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Adobe Senseiは米マイクロソフトの「Cortana」や米IBMの「Watson」などのAIと比べてどう違うのか。Adobe Senseiは発表を見る限りマーケティング分野に特化したAIに見えるがそれは正しいのか。

 Senseiは3つの分野にフォーカスしている。具体的には「クリエイティビティ」「ドキュメントのインテリジェンス」「マーケティングとカスタマエクスペリエンス」である。3つめは「エクスペリエンスインテリジェンス」と呼ばれているところで、これを得意分野としている。

 他のAIとSenseiの違いは大きく2つある。一つはアドビが非常に多くのコンテンツとデータを持っているということ。既に非常に多くのデータを保持しているAdobe Analyticsにアクセスしてデータを学習できるところが、Senseiとほかとの大きな違いである。

 もう一つのSenseiの違いは、アドビがデザインの部分、クリエイティブの部分を得意としているということ。

 この双方が補完的な強みとなっている。コンテンツとデータの両方を持っている、そしてこの分野に専門技術を持っていることが強みである。この2つのポイントがあるためSenseiはユニークな存在となっている。

Adobe Senseiのアーキテクチャについて。アプリケーションの下にAPI(Application Programming Interface)があり、その下にSenseiのレイヤーがあって、さらにその下にデータやコンテンツが存在するアーキテクチャはセールスフォース・ドットコムやオラクルといった他のベンダーのAIと同じように見える。フレームワークでの他社との違いを知りたい。

 どのソフトウエア会社もAIについて言及しているが、アドビのAIアーキテクチャはデータセットとコンテンツに特徴がある。AdobeはAnalyticsから100兆件に及ぶトランザクションデータを引き出せるし、Creative Cloudには1億件以上のクリエイティブなデジタル資産を持っている。つまりアドビが扱えるデータセットとコンテンツに大きな違いがある。

 AIのアルゴリズムにも差がある。私たちはAIのアルゴリズムをクリエイティビティとドキュメントインテリジェンスと、カスタマエクスペリエンスという分野に特化した形で構築している。ほかの会社は幅広くAIを展開しているように見えるが、私たちは深くそれぞれに特化した形でAIを提供しようとしている。

 私たちはAIをオープンプラットフォームで公開し、マイクロソフトもほかのパートナーもそれに基づいて構築できるようにしている。アドビ自身も自分たちのデータを持っているが、APIを開放することで、ほかのパートナーもプラットフォームを使えるようにしているのだ。ここが他社との差異だろう。

Senseiに関わっているチーム人数を教えてほしい。

 チームの人数については公開していない。ただ、最も大きな投資であると言える。