富士通は、全社内システムを自社クラウド「FUJITSU Cloud Service K5」へ移行中だ。5万台のサーバー、600超のシステムをK5上で刷新し、5年間で約350億円のTCO削減を目指す(関連記事:5万台のサーバー巻き取りで350億円削減、富士通が自社クラウド「K5」を育成中)。サーバー移行に加えて、各種ミドルウエアや業務アプリケーションの共通化にも踏み込む。IT戦略本部 本部長の纐纈孝彦氏、総合商品戦略本部 本部長代理の杜若尚志氏に移行手法を聞いた。

(聞き手は森山 徹=日経コンピュータ


社内システムのK5への移行方針は。

 今、社内に山のようなIT資産を抱えている。手組みのシステムをいかにスリム化していくかは喫緊の課題だ。K5で特に期待するのはIaaS(インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス)とPaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)への移行だ。

富士通 IT戦略本部 本部長の纐纈孝彦氏(左)、総合商品戦略本部 本部長代理の杜若尚志氏
富士通 IT戦略本部 本部長の纐纈孝彦氏(左)、総合商品戦略本部 本部長代理の杜若尚志氏
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 今動いているシステムはそれぞれが3階層の構造になっている。個別最適でやってきたが、これを改め、業務を通して共通化していく。

K5でのPaaS活用例
K5でのPaaS活用例
(出所:富士通)
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 主な手法は三つある。まず統合基盤のPaaS化だ。Web/AP基盤、バッチ基盤、帳票基盤の整備を愚直にやる。2017年1月からパイロットを始めている。アプリ基盤とWebサーバーは業務に関係なく集約化する。バッチ処理など必要なリソースも業務に閉じることなく使っていく。帳票も同じような形で集約をかける。

 どの業務システムでもこれらの要素は必ず入っている。今までは業務システムごとに、開発、運用を個別にやっていたが、これを画一化していく。誰がやっても同じという、意識せずに済む世界に持って行きたい。今はインフラSEがこういう仕事を一生懸命やっているが、もうやらなくてもいいと考えている。もっとアプリケーションに注力できるよう、パワーシフトしていく。

「働き方改革」の一環で8万人にVDI

 次に、社内共通サービスの確立だ。認証や印刷のサービスなどは徹底的にPaaS化を推し進める。まずは本人認証、生態認証のサービスを基幹システムに組み合わせている。

 「働き方改革」を目指し、どこでも仕事ができる環境を提供しようとしている。施策の一つが帳票印刷のサービスだ。帳票印刷を複合機に出すのはどの会社でもやっている。ただ結構、複合機がマルチベンダーになっていて、富士通では4社の製品を使っている。

 いつもとは違う事業所で印刷しようとしたとき、複合機のベンダーが違うので、あらかじめドライバーを入れておく必要がある。この煩わしさを解消しようと、ドライバーを意識せずにどこでも印刷できるようにした。「Print Anywhere」と呼ぶサービスを複合機メーカー4社と共同開発し、2016年10月にリリースした。

K5が提供する「本人認証サービス」「どこでもプリントサービス」
K5が提供する「本人認証サービス」「どこでもプリントサービス」
(出所:富士通)
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 K5の上で動いている本人認証やPrint Anywhereのサービスは、仮想デスクトップサービス(DaaS)と組み合わせて提供する。Windows端末は仮想デスクトップ(VDI)で使うという方針を打ち出している。2017年中に利用者8万人規模のVDIをリリースする計画だ。