富士通は、全社内システムを自社クラウド「FUJITSU Cloud Service K5」へ移行中だ。5万台のサーバー、600超のシステムを対象に、グループ一丸で統合や共通化を推進。5年間で約350億円のTCO削減を目指す。プロジェクトの眼目は、社内実践で得たノウハウや知見を顧客に提供すること。K5のサービスを育て、顧客を引き込むためにプロジェクトの成功は不可欠。IT戦略本部 本部長の纐纈孝彦氏、総合商品戦略本部 本部長代理の杜若尚志氏に進捗を聞いた。

(聞き手は森山 徹=日経コンピュータ


社内システムのK5への移行計画をあらためて教えてほしい。

 計画は2015年2月の発表に基づき、富士通グループ国内外全ての社内システムを自社クラウド「FUJITSU Cloud Service K5(以下K5)」で刷新する。現在、全社を挙げてコスト構造改革を進めており、社内システムのK5移行により、5年間で350億円のTCOを削減する計画だ。TCOを下げると同時に、社内実践で得たノウハウ、知見をリファレンス化して顧客に提供していく。

写真1●富士通 IT戦略本部 本部長の纐纈孝彦氏(左)、総合商品戦略本部 本部長代理の杜若尚志氏
写真1●富士通 IT戦略本部 本部長の纐纈孝彦氏(左)、総合商品戦略本部 本部長代理の杜若尚志氏
[画像のクリックで拡大表示]

K5へ移行する狙いは。

 今後、持続的に成長を続けるICT基盤を考える必要がある。足かせになっているのは既存システムだ。SoR(Systems of Record、記録のシステム)と呼ばれる既存システムの運用費を下げ、戦略投資に振り向けることがK5移行の目標。自らK5活用を社内実践することで、顧客にも安心して使ってもらえるプラットフォームに仕立て上げていく。

写真2●「FUJITSU Cloud Service K5」の狙い
写真2●「FUJITSU Cloud Service K5」の狙い
(出所:富士通)
[画像のクリックで拡大表示]

 K5の中で、今はIaaS(インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス)の活用が中心だ。グループ各社がハードウエアを所有する形から、利用する形に変えていこうとしている。社内にセンサーを入れて、移行対象機器を洗い出しているところだ。社内資産の見える化を徹底し、グループ各社と移行計画を練って進める。担当者が100を超えるグループ会社を1社1社回り、趣旨の説明、移行プランのにぎりをしようとしている。

 社内で行っているIT業務に対し、何らかの価値を付けたいとも考えている。具体的には、共通業務のサービス化などだ。PaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)の開発に事業部と取り組んでいる。