九州大学は2014年12月に、サイバーセキュリティに関する教育プログラム開発と研究開発を行う組織「サイバーセキュリティセンター」を開設した。同センターが中心となり2016~2017年度をめどに、サイバーセキュリティ教育を全学部1年生の必修科目にすることを目指している。この取り組みについて、サイバーセキュリティセンター長の岡村耕二教授に話を聞いた(関連記事:サイバーセキュリティを全学部で必修に、九大が16年度開始を目指す)。

(聞き手は羽野 三千世=日経コンピュータ


まず、九州大学にサイバーセキュリティセンターが設立された経緯を教えてほしい。

 九州大学では2013年度から、学生が個人PCで学内ネットワークを利用するBYOD(私的デバイス活用)の仕組みを導入している。全学生が個人PCを常時携帯して授業を受けるようになり、学生がサイバー空間にアクセスする時間が拡大した。それに伴い、学生による情報セキュリティインシデントも増える傾向にあった。

 私自身が、学内ネットワークのサイバーセキュリティ対策を担当する「情報基盤研究開発センター」の副センター長の立場にあり、様々なインシデントを目の当たりにする中で、学生のセキュリティリテラシーに危機感を覚えた。

 学内ネットワークにファイアウォールを設置しても、学生の個人端末は守りきれないし、学生が意図せずサイバー犯罪の加害者になるリスクも回避できない。学生一人ひとりの情報セキュリティリテラシーを高めることが、大学におけるサイバーセキュリティ対策で最も有効な手段であると考え、全学生を対象としたサイバーセキュリティ教育の導入に向けた取り組みを開始した。

 サイバーセキュリティ教育を推進する組織として、2014年12月に新設したのが「サイバーセキュリティセンター」だ。同センターが中心となり、サイバーセキュリティ教育のシラバスや教材開発を行っていく。2016~2017年度をめどに、サイバーセキュリティ教育の授業を全学部1年生の必修科目にすることを目指している。入学時のオリエンテーションで啓蒙するだけでは不十分だ。単位を取る授業の形で、真剣に学習してもらう。

写真●九州大学 サイバーセキュリティセンター長 岡村耕二教授
写真●九州大学 サイバーセキュリティセンター長 岡村耕二教授
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