シリコンバレーでは、次々とベンチャー企業が生まれているが、2016年の注目分野はどこか。シリコンバレーに拠点を置き、日米の有望企業に出資するベンチャーキャピタルのFenox創業者であるアニス・ウッザマン氏に聞いた。

(聞き手は菊池 隆裕=日経BPイノベーションICT研究所


前回、シリコンバレーの起業事情をうかがったとき(IBMの「Watson」がスタートアップ企業を生み出している)には、IoT(Internet of Things)、健康/医療、ロボティクス、ビッグデータを挙げました。2016年には、どのような分野に注目されていますか。

 ソーシャルロボット、IoT、3Dプリンティング、自動運転、AR(拡張現実感)/VR(仮想現実感)、ホログラフィ、3Dライダー(lidar)、移動手段の8分野を挙げたいと思います。

Fenoxのアニス・ウッザマン氏
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Fenoxのアニス・ウッザマン氏

最初のソーシャルロボットは、具体的にはどのようなロボットを指すのでしょうか。

 ソーシャルロボットは、身近な家庭向けのロボットです。産業用ロボットに比べるとまだ市場規模が小さく見えるかもしれませんが、既に「Jibo」のような、学習機能や人工知能を発展させた家庭用ロボットが開発されています。価格帯が500ドル前後というのも、一般家庭への浸透が期待される点です。

 Jiboと似たようなソーシャルロボット「Buddy」も出てきて、最近いくつかのメディアに登場しました。Buddyは室内を動き回るので、セキュリティ強化に役立つと思います。

ソーシャルロボットは、どのような場面で使われると思いますか。

 日本での普及のきっかけとなるのは、おそらく高齢者向けです。高齢者がパーソナルロボットと対話することで、忘れがちな服薬のタイミングや内容を教えてくれたり、ロボットが定期的に簡易な診断をしてくれます。さらに、セラピー(治療効果)とも言える効果も報告されています。

 特定の疾病患者に対するヘルスケアロボットも今後増えていくと思います。日本では、社員向けのメンタルヘルス管理が話題になっていますが、何らかのトラブルを抱えた人向けに解決策を提供してくれるアプリケーションをソーシャルロボット上に開発する、といったことができます。

事業モデルとしては、ロボットの販売を想定しているのでしょうか。

 ロボットは、IoT(Internet of Things)の1つとも見ることができますが、ロボットを通じて個人データを収集するのが開発会社の狙いです。サンフランシスコに拠点のあるCatalia Healthは、「Mabu」という生活習慣病患者向けのヘルスケアロボットを開発しています。患者が薬を飲んでいるかどうかといった対話を通じて、患者の情報を収集し、それを病院や薬局と共有するというビジネスモデルを考えています。

 ちなみに、ロボットを開発するベンチャー企業の多くがMIT出身者によって設立されています。JIBOの創業者で開発トップのCynthia BreazealもMIT出身ですし、彼女の研究所の最初の卒業生が作った企業がCatalia Healthです。