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量子暗号は銀の弾丸にあらず(下)

2017/12/01

Doug Drinkwater CSO

 量子暗号とは、量子力学の原理を利用して、意図した受信者以外には絶対に読まれないようにメッセージを暗号化するための手法だ。複数の状態を持つ量子の性質と、気づかれずに傍受することが不可能な性質を利用する。

前回から続く)

現実的な問題と国の干渉

 ただし、情報セキュリティにとって量子暗号は必ずしも銀の弾丸ではない。Woodward氏が挙げるのは、ノイズが多い荒れた領域で誤り率が高まって信頼性が下がることや、QKDで必要な単一光子を発生する際の技術的な課題だ。また、光ファイバーベースのQKDは、伝送距離に限りがあることから、中継器が必要となり、その部分が弱点になる。

 Buchanan氏はインフラの問題も指摘する。ブロードバンドの光ファイバーがエンドツーエンドで必要となる点だ。「エンドツーエンドの光ファイバーシステムが整うまで、まだ先は長い。通信チャネルのラストワンマイルは依然として銅線であることも多い。加えて、ハイブリッド通信システムを相互接続することから、エンドツーエンドの接続で物理的な通信チャネルを保護できない」

 そのほか最近では、ベルの定理に関するセキュリティ問題を発見した研究者もいる。また、政府の関与も油断ならない。結局のところ、現代の政治家は暗号化を理解しておらず、政府機関はエンドツーエンドの暗号化を破ることをもくろみ、大手IT企業のバックドアを好んでいる。

 そう考えると、英国の国立サイバーセキュリティセンターが、最近のレポートでQKDについて次のように否定的な結論を示しているのは、意外なことではないかもしれない。「QKDは実用上の根本的制約があり、セキュリティ問題の大部分に対処しておらず、また攻撃の可能性という面で十分に理解されていない。これとは対照的に、耐量子計算機暗号の公開鍵暗号は、現実の通信システムを未来の量子コンピュータの脅威から守るうえで、はるかに効果的な対策となるように思える」

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