情報セキュリティに関する政府の2015年度予算の概算要求額は367億8000万円となった。14年度当初予算額は542億3000万円であり大幅な減額に見えるが、大規模システム構築のための一時的な費用を除くと、実質的には約90億円の増額要求である。衆議院解散・総選挙にともない、15年度政府予算案の閣議決定は越年する見通しである。

 情報セキュリティに関する概算要求額は、内閣官房情報セキュリティセンター(NISC)が取りまとめたもの()。14年度当初予算の542億3000万円には、防衛省の「防衛情報通信基盤(DII)整備費」として128億円、内閣官房の「社会保障・税番号制度のシステム設計・開発費」として134億円が含まれるため、見かけが大きく膨らんでいる。これらを除くと約280億円となり、15年度の概算要求額はそれに約90億円を上積みした水準である。

表●政府の情報セキュリティに関する2015年度概算要求額
表●政府の情報セキュリティに関する2015年度概算要求額
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 内閣官房は、NISCの機能強化費として新規に15億9000万円を要求している。予算要求の前提としていた「サイバーセキュリティ基本法」は先の国会で成立して施行されたため、2017年度からの新システムの運用をにらんだGSOC(政府機関情報セキュリティ横断監視・緊急即応調整チーム)の体制整備・運用費用とともに、政府予算案としてそのまま承認される可能性が高い。

 サイバーセキュリティ基本法は、内閣官房長官を本部長とする「サイバーセキュリティ戦略本部」の設置を規定しており、12月16日の閣議では関連する3つの政令も決定された。これにより、15年1月9日に、サイバーセキュリティ戦略本部が設置され、同時に同本部の事務局機能を持つ現NISCは、内閣官房組織令に基づく組織として「内閣サイバーセキュリティセンター」に改称されることが決まった。

 センターの英文名称も、現在の「National Information Security Center」から、「National center of Incident readiness and Strategy for Cybersecurity」に変更されるが、略称はNISCのままとなる。政府内での検討初期に想定していた次官級の「内閣サイバーセキュリティ官」の設置は見送られ、現NISCから引き続いてセンター長は内閣官房副長官補(国家安全保障局次長と兼務)が務める。

 16日の閣議ではサイバーセキュリティ戦略本部の副本部長としてIT政策担当大臣を充てることも決まった。有識者構成員の人数などの細目を定めた政令も決定され、戦略本部のメンバー構成は現行の情報セキュリティ政策会議と同じになることが確定した。