「運用しながら変えていく」。こう話すのはマイナンバー制度の陣頭指揮をとってきた内閣府大臣官房番号制度担当室長で副政府CIOの向井治紀・内閣審議官だ。

 情報連携の不備をはじめとする課題を解決してマイナンバー制度の理想を実現するため、向井審議官は紙のやり取りを前提にした省庁や自治体のシステムを変えて職員の仕事の進め方を見直し、事務手続きを効率化する必要性を訴える。

 「ITで完結できる事務は全部システムで済ませられるように作りかえなければならない。ITから紙、紙からITというのは最悪だ」(向井審議官)。マイナンバー制度を運用しながら省庁や自治体の職員の働き方も変えてスムーズに情報をやり取りできるようにする必要もあると指摘する。

法律ではなくユースケース

 ところが現状は添付書類を省くことが目的になっており、利用者視点が置き去りだ。これがマイナンバー制度の情報連携などを阻む壁になっている。

 データ標準レイアウトや運用ルールの不備について、向井審議官は「情報連携ではデータの提供者と照会者が違うので、データを提供する側の部局がデータの定義を細かく伝えるようにしないと、データをもらう方の部局には役立たない」と説明する。データを利用する部局の業務内容や事務手順を提供元の部局があらかじめ理解できるよう、部局間の情報共有の仕組みを見直す必要があるという。

縦割りを排除した情報連携を
縦割りを排除した情報連携を
マイナンバー制度で求められるガバナンス改革
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 同じ指摘は自治体からも出ている。情報共有を円滑にして行政手続きをスムーズに進めるには、どの情報がどんなタイミングで必要なのか。最適解を導くためには「法律だけに基づくのではなく、利用者のユースケースを基にデータ標準レイアウトや運用ルールを検討し直さなければならない」とある自治体関係者は話す。