マイナンバーを利用して行政機関の間で情報をやり取りする「情報連携」と、新たに構築した個人向けWebサイト「マイナポータル」。先行公開や稼働遅れを経て2017年11月13日にようやく本格運用を開始したこの2つの取り組みについて、電子行政分野では注目が集まった。

 ランキング1位は「なぜマイナポータルはJava必須なのか、開発者側の理屈でユーザー体験がおざなりに」である。2017年初め1月16日に政府がマイナポータルを先行公開した際に、その使い勝手の悪さに不満が噴出した裏側を取材した記事だ。マイナンバーカードを使ってログインするのにJava実行環境を含め複数のソフトをインストールする必要があり、PCの初心者には難易度が高かった。そうまでしてJavaを使った理由に切り込み、好評を博した。

 政府はこれらの課題を改善するため、本番稼働を延期。その経緯は16位の「マイナポータル本格稼働が3カ月延期へ、使い勝手や『Java必須』を改善」や、10位の「Javaなしでログイン可能に、内閣府が難易度高いマイナポータルを改善」が詳しい。

 2位には「もう笑えないマイナンバーとマイナンバーカードの混同」が入った。ITproの読者にとってはいわずもがなだろうが、マイナンバーは「国内に住む1人ひとりに振られた12桁の番号」で、マイナンバーカードは「希望者に配られる顔写真が入った身分証となるカード」である。政府やマスコミでの混同が続き、記者は「マイナンバーを扱わない用途があるのに、マイナンバーカードと名付けた役所のセンスのなさは否定できない。この際、JPKIカードと名付けた方が良かったのかもしれない」と指摘している。

 3位にランクインしたのは「マイナンバーシステム障害の責任は2億円、富士通らベンダー5社の負担で合意」。2016年暮れにマイナンバーカード管理システムで発生したシステム障害について、発注元の地方公共団体情報システム機構(J-LIS)が発注先の5社コンソーシアム(NTTコミュニケーションズ、NTTデータ、NEC、日立製作所、富士通)に対して、1億9450万円の費用負担を求めると発表した。本記事は同事案について、障害発生システムや各社の分担を詳報した。

 なお、政府の対応の遅れをITproはつぶさに追ってきた。2月には8位の「『マイナポータルは夏に延期、マイナンバーカードを五輪入場券に』、担当室長明かす」と掲載。続く3月には4位「マイナンバー情報連携の本格運⽤はなぜ延期できたのか」で真相に迫った。

 10月には7位の「遅れるマイナンバー制度の本格運用、情報連携は早くて11月13日」を、そして11月には12位の「マイナンバー制度、11月13日から本格運用を開始」を掲載。2018年はマイナンバーカードの活用が進んでいく。引き続き同分野を専門記者の深い解説で追いかけていく。

電子行政のアクセスランキング
期間:2017年1月1日~12月10日
順位タイトル
1位なぜマイナポータルはJava必須なのか、開発者側の理屈でユーザー体験がおざなりに
2位もう笑えないマイナンバーとマイナンバーカードの混同
3位マイナンバーシステム障害の責任は2億円、富士通らベンダー5社の負担で合意
4位マイナンバー情報連携の本格運用はなぜ延期できたのか
5位政府が電子行政の推進方針を大転換
6位政府が17年度予算案を公表、マイナンバー基盤整備は終息へ
7位遅れるマイナンバー制度の本格運用、情報連携は早くて11月13日
8位「マイナポータルは夏に延期、マイナンバーカードを五輪入場券に」、担当室長明かす
9位予定価格9億円が15万円、大阪府の自治体情報セキュリティクラウドで超安値落札
10位Javaなしでログイン可能に、内閣府が難易度高いマイナポータルを改善
11位電子行政サービスは使いにくいままでよい、APIさえあればね
12位マイナンバー制度、11月13日から本格運用を開始
13位進まないマイナンバーの収集、課題は不信感の払拭
14位マイナンバーの誤送付、 漏洩への誤解を払拭すべし
15位35億円の追加支出に開発遅れも、マイナンバーの情報連携システム
16位マイナポータル本格稼働が3カ月延期へ、使い勝手や「Java必須」を改善
17位ネットで行政手続き、当たり前に!?
18位23兆円の巨大市場、中堅IT企業向けの案件も多い「入札」の現状(前編)
19位「爪QR」は認知症患者を助けたか?
20位「マイナポータル」にマイナンバーカードでログイン可能に、ただしJava実行環境が必要