2017年のITpro総合ランキング。1位から4位までの記事タイトルを見ると共通点がある。「ユーザー」だ。タイトルに「ユーザー」と直接書かれた記事、あるいはユーザーの「声」をタイトルに掲げた記事が1位から4位を独占した。
1位は「失敗の全責任はユーザー側に、旭川医大とNTT東の裁判で逆転判決」。病院情報管理システムの開発失敗の責任を巡り、旭川医科大学とNTT東日本が争っていた訴訟の控訴審判決を解説した記事だ。一審では双方に賠償金の支払いを命じていたが、控訴審では旭川医大の債務不履行だけを認め、ユーザーである旭川医大に賠償金の支払いを命じた。
一方、4位「怒りを通り越してあきれるOracleユーザー」は、上がり続ける保守料金やライセンス体系の変更に戸惑うユーザーの姿を描いたもの。1位と4位はシステムの開発段階と運用フェーズで変わるユーザーとベンダーの立場を端的に示しており、その関係のあり方に一石を投じた。6位「システム刷新に失敗した京都市、ITベンダーと契約解除で訴訟の可能性も」はユーザーとベンダーのテスト手法の見解の不一致から生じたトラブルを解説しており併せて読みたい。
2位と3位はソフトウエアやサービスのユーザーの「声」が起点となっている。2位「『遅くて使いものにならない』という光回線への声、定額制も限界か」は、定額制から再び「従量制への移行」が「濃厚な気配」であることを解説。接続方式などを示しながらプロバイダーで起こっている現象をひも解く。光回線の定額制を当然のこととして受け入れているユーザーからすれば、「従量制への移行」は契約時程度しか意識しなかったプロバイダーの存在をあらためて強く意識させることになる。
3位「Excel方眼紙がはびこる理由、『神Excelはおかしい』と声を上げよ」は賛否両論、侃々諤々(かんかんがくがく)の議論のある「Excel方眼紙」に対して、明確に反対の立場を取るユーザーの主張を取り上げたものだ。「Excel方眼紙」はベンダーが想定していなかった使い方をユーザーが編み出したもので、ベンダーの手を離れたところでユーザー同士が是非を問う構図になっている。
ここに挙げた総合ランキング上位の記事は、一方の立場に偏りがあったり、変化が生じたりして、緊張や摩擦、あるいは新しい主張や場が生まれ、その「度合い」を超えたところに注目が集まることを物語る。誰もがユーザーであり、そして同時に何かを作ったり、販売したり、提供したりする立場にある。2018年はどのような関係からどんなニュースが生まれるのか。その当事者は読者の皆さんかもしれない。