光か、闇か。まるで、この冬の最大の話題作「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」のキャッチコピーのように、「IT経営」では2017年に脚光を浴びた華やかな新技術の裏側に潜む“闇”の部分をあぶり出した記事に、読者の強い関心が集まるという皮肉な結果となった。
第1位は師走に飛び込んできたショッキングなニュース「PEZY社長逮捕、スパコンの旗手に何が起きたのか」。スーパーコンピュータの開発ベンチャーであるPEZY Computingの齊藤元章社長ら2人が新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成金、約4億円を不正に受給した疑いで逮捕された。スパコン技術の開発をけん引してきたキーパーソンの逮捕に、IT関係者は驚きを隠せなかった。
第2位「3日で飽きたAmazon Echo、秘めたる可能性って何?」と第7位「社長から「ウチもAIで何かできないか」と言われたときにやってはいけないこと」は、2017年に話題を独占した人工知能(AI)に関するもの。だが、AIを搭載したスマートスピーカーを自宅で使ってみた記者の体験記では「妻が3日で飽きて、コンセントを抜いていた」と消費者の本音を暴露した。一方、AIというバズワードを宣伝文句に盛り込んで先進性をアピールしたい経営者と、AI活用レベルの低さという現実の狭間で苦しむ現場担当者の葛藤も、読者に納得感を与えた。
新技術が台頭すれば、魅力に欠けるものは消えていく。第3位の「さらばWindows Phone、MSが犯したIBMと同じ間違い」は、iPhoneとAndroid端末の2大スマホに押され、ひっそりと幕を閉じたWindows Phoneの顛末を描いた。
第4位の「システム開発の失敗を巡り裁判に至るまで、旭川医大とNTT東の2010年」は基幹システムの刷新という、決して避けては通れない経営の根幹に関わる案件のトラブルだ。普及が進む電子カルテを中核とした病院情報管理システムの開発が失敗した責任を巡って、旭川医科大学とNTT東日本が争った訴訟の控訴審判決が一審判決を覆す結果となった。一審判決は旭川医大の過失は2割、NTT東が8割と双方に賠償を命じていた。ところが控訴審では一転し、旭川医大に100%の責任があるとした。この経緯を改めて検証するため、2010年に日経コンピュータの看板コラム「動かないコンピュータ」が報じた両社を巡る記事の再掲載が改めて読まれた。
AIのように世の中を一変させる可能性を秘めた新技術が登場すると、業界地図は塗り変えられる。それはあらゆる企業に当てはまり、AIなどの導入を支援する立場にあるITベンダーにとっても他人事ではない。第8位の「「富士通が必要とされなくなる」という恐怖」では、富士通幹部が危機感を募らせる告白が関心を集めた。2018年はAI人材の育成と獲得が大きな焦点になるだろう。