日経FinTech編集長の原 隆
日経FinTech編集長の原 隆

 年末にかけて大いに話題になった一つに「ZOZOSUIT」がある。ZOZOSUITは、アパレルEC(電子商取引)「ZOZOTOWN」を手掛けるスタートトゥデイが2017年11月22日に発表したボディスーツだ。身体を採寸するためのもので、送料のみで無料配布することも相まって、注文が殺到しているという。

 ZOZOSUITは伸縮センサーを内蔵しており、着用してZOZOTOWNのアプリをかざすとBluetoothで通信。瞬時に全身1万5000カ所を精密に採寸できるらしい。スタートトゥデイの前澤友作社長はTwitterで「ZOZOSUITは、街頭やコラボ企業経由等、圧倒的な速度で世界中で無料で配りまくり、体重計や体温計のように一家に一台の存在にします。そして、世界中のお客様の体型を最も知り尽くした企業となり、そのデータを元に一人一人にピッタリの服を提供する、世界でも類を見ないファッション企業を目指します」と語っている。

 スタートトゥデイはもともと「データ」に貪欲な企業だ。物流拠点の「ZOZOBASE」では、搬入された衣類や靴、アクセサリー、帽子などすべての取扱商品を自らが定めた独自の採寸基準で測り直してきた。メーカーごとに異なる採寸方法、色の表記などがファッション業界のECを阻害する最大の要因ととらえてきたからだ。こうして作り上げていったデータベースは数十万アイテムに及ぶ。

 筆者も以前、ZOZOBASEを取材したことがあるが、次々と搬入されてくるアイテムを一つひとつ丁寧に採寸していく様子を見て、そのかける手間の多さに驚いたことを覚えている。

 だが、この愚直なまでにかけた手間によって出来上がったデータベースがあってこそ、今回のZOZOSUITはインパクトを持つ。顧客の細かな体型データと、独自に統一したファッションアイテムのデータが初めてきれいな形で連携し、各々にとって最適なサイズの商品を自動的にレコメンドしたり、これまでにないフィット感を実現する商品を独自開発したりすることが可能になる。商品側のデータがバラバラの基準で採寸されていたままだとしたら、今回のZOZOSUITの威力は半減していただろう。