日経ニューメディア編集長の田中 正晴
日経ニューメディア編集長の田中 正晴

 2018年、放送業界にとっては、地上デジタル放送の「波」(電波)がどうなるかが最大の焦点になりそうだ。地上デジタル放送は現状、「UHF帯」の13chから52chまでの合計40チャンネル、240MHz幅(470M~710MHz)を利用している。240MHzの帯域幅を維持するのか、あるいはぎゅっと圧縮するなど大幅に見直すのか。この議論が熱くなりそうだ。

 現在の地上デジタル放送は、変調方式にはOFDMを採用する。同方式はSFN(単一周波数ネットワーク、同一チャンネルの繰り返し利用)に向くため、周波数の利用効率は高いと言われている。そこで各放送局では、可能な範囲でSFNをベースに周波数を繰り返し利用しているものの、SFNでカバーしきれない地域では別のチャンネルを使って放送エリアをカバーしている。

 この結果、現在は全国の各放送エリアをカバーするのに40チャンネルの帯域を要している。ちなみに、放送業界は、デジタル移行を機にアナログ放送時代に使っていたVHF帯は返上した。かつUHF帯についても、デジタル移行後に再編(リパック)して、710M~770MHzの10チャンネル分を返上した。この帯域は今、ITS(高度道路交通システム)や移動体通信に割り当てられている。

 地上放送における電波の使い方の現状に対して疑問を投げかけたのが、規制改革推進会議の2次答申(2017年11月)である。「放送用の帯域の更なる有効利用」を打ち出した。同会議は、Society5.0 を世界に先駆けて実現することなどを目的に電波制度改革などの検討を実施してきた。一般には、「オークション制度」や「電波利用料」などの検討内が注目を集めたが、2次答申では電波のダイナミックな割り当てに向けて「電波の利用状況の見える化」「周波数移行を促すインセンティブ」などを含む一連の施策をパッケージ化し方向性を示した。

 唯一この「放送用の帯域の更なる有効利用」に関する項目だけは十分な検討ができていないとして、「(総務省だけでなく規制改革推進)会議においても引き続き検討する」とした。同会議のこの点に対する力の入れよう、関心の高さが伝わってくる。

 ちなみにオークション関連では、2次答申において対象を「新たに割り当てる周波数帯」に限定しており、既に割り当て済みである地上放送は、そもそも対象になっていない。