ウーバー症候群――。新興企業がITを使った新しいビジネスモデルで既存業界のルールを壊す現象を指す言葉だ。語源となった米ウーバーテクノロジーズはスマートフォン1つで配車から乗車、決済まで完結できる配車アプリ「Uber」を武器に世界を席巻。米国を中心に一般のドライバーが手軽にタクシー事業を始められる「ライドシェア(相乗り)」が広がっている。

 日本は道路運送法で自家用車による有償の旅客送迎、いわゆる「白タク」行為を禁じている。遅々として進まないライドシェアの規制緩和にウーバーは本業で日本を攻めあぐねているのが現状だ。

 配車アプリの利便性は一度使えば病みつきになる。沖縄など観光地では中国からの旅行客の需要を狙い、海外の配車アプリを使った白タクが横行しているという。

 こうしたなか、タクシー保有台数で国内トップの第一交通産業はソフトバンクの仲介で、約4億4000万人の登録者を抱える配車サービス世界最大手の中国・滴滴出行と2017年11月8日に提携を発表した。2018年春に都内や大阪、福岡などの地域でタクシー2200台を使い、訪日中国人向けの配車アプリサービスを始める計画。白タクが不正に取り込んでいた訪日中国人の需要を取り返す狙いだ。

 景気のバロメーターと言われるタクシー業界は全体で見れば逆風が吹いている。国土交通省によれば、2000年度に9491人だったタクシー1台当たりの輸送人員は15年間で約35%減った。人口減を控えていることもあり、業界全体の急速な回復は見込めなそうだ。