大学活動でもITの役割がより重要になっている。大学ICT推進協議会(AXIES)の理事を務める広島大学の相原玲二副学長に、大学の教育・研究・運営の強化のためのIT活用について聞いた。

(聞き手は中野 淳=教育とICT Online)

大学ICT推進協議会 理事/広島大学 副学長(情報担当) 教授 相原玲二氏
大学ICT推進協議会 理事/広島大学 副学長(情報担当) 教授 相原玲二氏
撮影:森本 勝義
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大学でのICT活用の現状と課題をどう見ていますか。

 大学によって事情は異なりますが、一般論として言えば教育と研究の縦割りの組織がICTの整備や活用の「壁」になっています。ICTを個別最適で整備しており、学内全体で最適化できていません。

 全学共通の情報基盤を取り扱う情報センターを設置している大学でも、主な目的は教育・研究利用で事務部門は整備の対象でないという例があります。

大学のICT活用を統括する責任者はいないのですか。

 国立大学法人化後に大学の自主性が尊重されるようになり、多くの国立大学がCIO(最高情報責任者)を設置するようになりました。ただ、企業のCIOのように、役員クラスの人が予算を含む大きな権限を持ってガバナンスを利かせる状況にはなっていません。

 CIOの問題など大学でのICT活用の共通の課題に連携して取り組むために、2011年に大学ICT推進協議会が発足しました。2017年9月時点で、大学や高等専門学校など103の教育機関が会員として協議会に参加しています。協議会は、縦割りの組織から脱却して戦略的なICT活用を推進するための情報交換・共有の場となっています。

具体的にどのような活動を行っているのですか。

 11の部会を設置して主要な活動を行っています。例えばソフトウェアライセンス部会では、大学におけるソフトウエアライセンスの締結・管理・利用・課題について調査し、情報を共有しています。また、多くの会員を擁するスケールメリットを生かしメーカーとの交渉などを行っています。例えば、マイクロソフトと協議会との包括ライセンスプログラムにより、会員の大学では特別価格でOffice製品などを利用できます。

 また、クラウド部会では、教育支援や研究支援、事務支援、情報インフラなどクラウドを利用した大学向けの各種ソリューションを紹介するカタログを発行し、クラウドサービスの内容や利用に際し留意すべき点などの情報を提供しています。

年次大会で情報交換を推進

新しい取り組みはありますか。

 オープンサイエンスや研究公正の厳格化などを背景に、大学での研究データの適切な保存・公開について関心が高まっています。そこで、2017年度から新たに研究データマネジメント部会を立ち上げました。ここでは、研究データの管理、活用に関するポリシーの制定、データ管理のシステム構築・運用の参考となる事例の収集などに取り組みます。

12月に年次大会を開催します。

 年次大会は会員相互の情報交換の場として開催しています。7回目となる今回は、2017年12月13~15日の3日間、広島市で開催します。前回の京都の年次大会は多くの参加者を集めました。今回も引き続き盛大に開催できるよう準備しているところです。