教育の情報化の進展度は、学校や地域によって大きな格差が生じている。日本教育工学協会(JAET)の野中陽一会長に、情報化のポイントとJAETの取り組みについて聞いた。

(聞き手は中野 淳=教育とICT Online)


日本教育工学協会会長/横浜国立大学大学院教育学研究科教授 野中陽一氏
日本教育工学協会会長/横浜国立大学大学院教育学研究科教授 野中陽一氏
(撮影:菊池 くらげ)
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教育の情報化では、学校や地域での格差が課題になっています。

 電子黒板やプロジェクターなどの大型提示装置の整備が十分でないなど、まずICT環境の整備状況に格差があります。その原因の一つは、整備を担当している自治体や教育委員会の職員の意識の差にあると考えています。整備で先行する自治体では教育の情報化を推進する人材を育て、うまく予算を引き出しています。

 授業での活用にも格差が生じています。教育現場の情報化には、普及プロセスのモデルがあります。これまでの授業の進め方に合わせてICTを導入して、徐々にICT活用を広げていくのです。このプロセスで進められる学校や地域は情報化が自律的に進んでいきます。

効果を実感してスキルが向上

具体的にはどのようなプロセスなのでしょうか。

 例えば、ICTの導入段階として、常設の大型提示装置と教材、指導者用のデジタル教科書などをセットで整備すると教員も使いやすく授業でのICT活用が進みます。教員が効果を実感すると、教員同士が校内研修などで情報交換するようになり、スキルが向上します。

 授業でうまくICTを活用するようになると、子どもたちも教員のまねをして大型提示装置を使って説明する場面が増えます。このように、ICT活用が定着して授業のスタイルが変わっていきます。

JAETでは「学校情報化認定」の取り組みを進めています。

 総合的に情報化を進めた小学校、中学校、高等学校を認定する仕組みで、2014年度に始めました。学校はネット上の診断システムを使って、「情報化の推進体制」「教科指導におけるICT活用」「情報教育」「校務の情報化」について自己診断します。この結果を基に、学校情報化認定委員会が審査します。2017年9月までに339校の学校情報化優良校を認定しています。

 特に優れた学校は学校情報化先進校として表彰しています。2017年度までに16校を先進校に選びました。優良校が一定以上の割合になった地域は、学校情報化先進地域として表彰しています。2016年度は5市町村を表彰しました。2017年度は3市を表彰します。

2018年度に更新予定

 学習指導要領やICT環境の変化などに応じてチェック項目の見直しを行っています。2018年度から新しいものに変わる予定です。

全日本教育工学研究協議会全国大会を2017年11月に開催します。

 JAETの主催で2017年11月24日、25日の2日間、和歌山市で開催します。今年の全国大会は、「ICT活用で創造する『主体的・対話的で深い学び』」をテーマに、公開授業や講演、研究発表、ワークショップなどを開催して成果の共有を図ります。公開授業は地元の小中一貫校や中高一貫校、プログラミング教育などの取り組みを見学できます。教育現場の実践研究を発表する場として裾野が広がってきた結果、今回の研究発表には124の応募がありました。