自動運転の分野でも、即位に日本版GP「みちびき」を用いた実証実験が増えている。

 ある自動車業界関係者は、自動運転におけるみちびきの利用について、「課題はあるが期待している」と話す。課題とは、ある程度高速の移動体での利用は、まだパイロット版の域にあること。また速度や加速度といった運動データを利用したINS(Inertial Navigation System)機能も必要で、使い方の面で工夫が必要となることだ。一方で期待しているのは、みちびきは日本上空にいるため車両から捕捉しやすく、かつセンチメータ級測位に必要な補正情報が衛星経由で送られてくるメリットがあるので。RTK-GPSでは必要となるネットワーク設備などがいらなくなり、手軽に使えて低コスト化につながるのではないかとしている。

 現時点で、どのような取り組みが進んでいるかを見ていこう。

高速道路で実証実験

 三菱電機は、みちびきのセンチメータ級測位補強サービス(CLAS)を測位に用いた自動運転車「xAUTO」の実証実験を、山陽自動車道の一部区間で進めている。

三菱電機の自動運転車「xAUTO」の山陽自動車道における実験の様子
三菱電機の自動運転車「xAUTO」の山陽自動車道における実験の様子
(写真提供:三菱電機)
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 xAUTOは、前方監視カメラや周辺監視カメラ、ミリ波レーダー、ソナーといった認知・判断・操作に関するセンサー類による自律型の自動走行と、衛星システムをはじめとするインフラ型の自動走行によって、自動運転を実現している。

 インフラ型の自動走行では、みちびきによる誤差cmクラスの測位であるCLAS(Centimeter Level. Augmentation Service)を採用。「自車の場所はもちろん、車線上の場所まで把握できる」(三菱電機 自動車機器開発センターの赤津 慎二 副センター長兼ADAS技術部長)。良い環境での自動運転は自律型で対応し、路面が見えにくいような悪い環境での自動運転はインフラ型で対応するといった形で組み合わせて使う。

 みちびきから補強情報が送られてくるため、CLASではネットワーク設備が不要となる。ただし「みちびきの補強情報は、地上のネットワーク経由で配信することも可能だ。現時点でそうした配信サービスを提供する事業者は存在しないが、冗長化などの観点から、補強情報を衛星経由とネットワーク経由の両方で車に送り、車の側でセレクトするのがよいと考えている」(三菱電機 高精度測位事業推進部の福吉 清岳次長)。