「1980年代に初めてインターネットに触れ、サイバーと物理が遊離し誰もがやり直せる空間だと仲間内で興奮して話したものだ」。日本のインターネットの父と呼ばれる慶応義塾大学の村井純教授は、30年前のネット黎明期を振り返る。

 実名を知らない利用者同士が協力し、一定のルールのもとコミュニティを運営する。そんな古き良きネットの姿は、30年を経た今、理想とかけ離れた形になりつつある。


 万引きされた本、盗まれた自転車や野球ボール、現金――。

 フリーマーケット(フリマ)アプリ市場が急拡大するにつれ、最大手のメルカリで規約違反の出品が相次いだ。事業者は一部の悪徳利用者による違法・規約違反行為に手を焼く被害者である一方、出品者の厳格な本人確認が後手に回っていたという不備も明らかになった。

 「国内ではシェアリングサービスへの不安が根強く、先進的な利用者層から先へと市場が広がりにくい」。シェアリングエコノミー協会の石原遥平氏はこう打ち明ける。2016年7月に総務省が公開した情報通信白書によれば、所有物シェア、民泊、駐車場シェアなどの利用度や利用意向度は主要8カ国中で日本が断トツの最下位だった。利用をためらう最大の理由は「事故やトラブル時の対応に不安があるから」。ネット基盤を前提にしたシェア市場が海外ほど普及しない一因だ。

 人と人をつなげるSNSの機能は、ときに犯罪行為を助長する。警察庁は2017年10月19日、SNSなどに起因する児童買春や児童ポルノなどの犯罪被害に遭った児童数が、2017年1月~6月期に過去最多の919人にのぼったと発表した。出会い系サイトが社会問題化した2003年の約1.5倍に当たる。

「みんなの意見」はもう正しくない

 ディー・エヌ・エー(DeNA)が運営していた医療情報メディア「WELQ」が不正確な記事を量産していたことに端を発するキュレーションメディアの騒動。1年あまりたった現在も、完全に収束したとは言いがたい。