満員電車や交通渋滞は代替手段に乏しく、利用者は不本意でも使わざるを得ない。だが、一般のサービス業でピーク対応がまずければ顧客が離れ売り上げに響いてくる。業務プロセスや仕事の分担方法などを見直してピーク対応力を高める3社を紹介しよう。

[星野リゾート]業務を見える化、全員で客室清掃

 星野リゾートが2017年4月に改築オープンした旅館「界アンジン」(静岡県伊東市)はスタッフ50人が45室の客室を切り盛りする。一般にこの規模の旅館は従業員が分業で働くが、界アンジンでは尾崎雄平総支配人以下、全員が清掃や配膳をこなしている。

 旅館業務にはいくつか業務量のピークがある。最大のピークは宿泊客がチェックアウトした後、正午ごろの客室清掃だ。次のチェックインまでの2時間半程度で全ての客室と大浴場など共用設備を清掃し、宿泊客をもてなす準備に追われる。このピークをさばく人員を確保できなければ泊まれる部屋を減らすしかない。

 界アンジンは一般の旅館にあるような「客室担当」「食事担当」といった区別が無く、全員が全ての業務をこなす。2交代制で働き、客室清掃時に早番と遅番のスタッフが重なるシフトを組むように工夫し、全員で客室を清掃する。

星野リゾートの業務改善のイメージ
星野リゾートの業務改善のイメージ
旅館スタッフを多能工に(写真提供:星野リゾート)
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 「マルチタスク」と同社が呼ぶ試みは業務の細分化が肝だ。業務を約100個の工程に分解、「掃除機のコンセントはここ」などと事細かに記述し、未経験でもベテランと同等の質と速度で仕事ができるように工夫した。

 工程を細分化したことで、汚れがひどい客室の掃除をほかの人が手伝いやすくもしている。マルチタスクを導入する計画に基づき、改装設計段階で客室の間取りを標準化した。

 スタッフは清掃後、フロントや調理など本来の持ち場で業務を担当。盛り付けや配膳など、夕食のピーク時もやはり全員でこなし、最少の人員で最大のピーク対応力を発揮している。

[Sansan]細分化して隙間を活用

 法人や個人がスキャンした紙の名刺を電子化する「名刺管理サービス」を提供するSansanは業務のやり方を改めて、ピークを乗り切っている。