学校教育の現場でも、IT活用の必要性は高まる一方だ。だが、そのための環境整備は進んでいない。日本は世界的に見ても大幅に遅れており、特に児童/生徒向が使うPCやタブレットの整備状況は目標に遠く及ばない。そんな中、文部科学省が「学校におけるICT環境整備の在り方に関する有識者会議」を開催し、今後の環境整備に関する一つの方針を示した。この会議の座長を務めた東北大学大学院情報科学研究科 堀田龍也教授に、学校におけるIT環境の現状と今後について聞いた。
(記事構成:八木 玲子=ITpro)
山内:前編、中編と、学校現場でのICT環境のあり方についてうかがってきました。「安価なものでもよいからたくさん入れる」というのが、有識者会議が示した指針の一つということですよね。
そこで質問したいのが、子供用端末の台数についてです。有識者会議の最終まとめには、「最終的には1人1台が望ましい。だが今の整備状況などを踏まえると3クラスに1クラス分程度が適当」とされています(下表)。ここは議論になりそうにも思うのですが、なぜ「3クラスに対して1クラス分」なのでしょう。
ICT機器等 | 設置の考え方等 |
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大型提示装置 |
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実物投影装置 |
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学習者用コンピュータ(児童生徒用) |
※最終的には「1人1台専用」が望ましいが、当面、全国的な学習者用コンピュータの配備状況なども踏まえ、各クラスで1日1授業分程度を目安とした学習者用コンピュータの活用が保障されるよう、3クラスに1クラス分程度の学習者用コンピュータの配置を想定することが適当である。 |
指導者用コンピュータ(教員用) |
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堀田:確かに、なぜ4クラスでも5クラスでもなくて3クラスなのかと、しばしば突っ込まれます(苦笑)。先進的な実践の経験を持った委員が議論して、「この程度が適切だろう」と合意した値です。
本来は、子供たち全員が1人1台専用の端末を持つことが望ましいのです。今は多くの人が自分専用のPCを持っていますし、スマートフォンもタブレットも使います。1人1台どころか1人複数台の時代です。
では学校でも1人1台は整備しましょうとなったとき、それは学校の備品として税金で購入すべきなのか、保護者が買うのかという議論になります。例えばランドセルとか裁縫道具とかは、保護者が買いますよね。裁縫道具は小学校5~6年生の家庭科で数時間ずつしか使わないのですが、個人で購入します。学校の勉強以外でも役に立つから、という理由で学用品として買うわけです。収入の少ない家庭には、就学援助として経費を補助します。
これに沿うと、PCやタブレットも同じく学用品として保護者に買ってもらうという考え方もできます。いわゆるBYOD(私的端末の業務利用)です。学校では、ネットワーク環境やアカウントなどをインフラとして整備します。これが理想だと思います。