学校教育の現場でも、IT活用の必要性は高まる一方だ。だが、そのための環境整備は進んでいない。日本は世界的に見ても大幅に遅れており、特に児童/生徒向が使うPCやタブレットの整備状況は目標に遠く及ばない。そんな中、文部科学省が「学校におけるICT環境整備の在り方に関する有識者会議」を開催し、今後の環境整備に関する一つの方針を示した。この会議の座長を務めた東北大学大学院情報科学研究科 堀田龍也教授に、学校におけるIT環境の現状と今後について聞いた。

(記事構成:八木 玲子=ITpro)

山内前回、「一人ひとりに端末が用意されていると、子供の能力が高まることは確認されている」とのお話がありました。例えば、どんな事例がありますか。

堀田:2010年から実施された、フューチャースクール推進事業で見られた事例を紹介しましょう。この事業は機器やネットワーク技術がまだ未成熟な時期のプロジェクトだったので、現場の先生は苦労されましたし、いろいろと批判もありました。でも、子供の能力の伸びは確実に見られました。

 モデル校の一つに選ばれた広島市立藤の木小学校では、子供たちに1人1台の端末を導入しました。事業の予算は既に途絶えていますが、今も取り組みは続いています。フューチャースクール推進事業に携わった先生たちが教育委員会に働きかけて、それを教育委員会が理解して予算を付けて、さらに企業も応援して。当時導入した端末を、一部は修理したり買い足したりしながら、使い続けているんです。

東北大学大学院情報科学研究科 堀田龍也教授
東北大学大学院情報科学研究科 堀田龍也教授
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 なぜ続いているか。それは、先生たちの中に「これは子供たちのためになる」という確信があるからです。自分でいろいろな資料を調べて考える力、考えたことをまとめて発表する力、ICTを適切に使いこなす力。これらが、確実に伸びていることを先生たちが実感しているのです。

広島市立藤の木小学校でのICT活用
広島市立藤の木小学校でのICT活用
(出所:文部科学省、2015年6月30日開催「『デジタル教科書』の位置付けに関する検討会議(第2回)」資料)
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 藤の木小学校に限らず、地道に活用してきた学校の先生方は、同じような実感を持って取り組みを続けています。以前、山内先生とお話しした際に紹介した徳島県の足代小学校も同じです。