攻めのITを担う「第2のIT部門」と従来のIT部門を統合する。全社の事業をデジタル化するうえで最適なIT部門の姿は「攻守統合」だ。導火線はIoT。IHIや日立造船は既に成果を出している。

 「全ての機械製品をIoT(インターネット・オブ・シングズ)でつなぐ。そのための部門統合だ」。IHIの村野幸哉執行役員は力を込める。

 創業160年超、日本を代表する重工メーカーであるIHIはIT部門の構造改革に踏み切り、改革は着々と実を結びつつある。IoTを使った新サービスの創出などを担う、いわば第2のIT部門と、社内業務システムを担う第1のIT部門を2016年4月に統合した。

 統合後の組織名は第2のIT部門の「高度情報マネジメント統括本部」を継承。第2のIT部門を率いていた村野執行役員が本部長に就任した。

 それから1年半、成果は着実に表れている。その象徴が、2016年6月から提供している航空機エンジン向けIoTサービスだ。エンジンの稼働データを分析して、航空会社が最適な整備計画を立てやすくなるのが売り。既に航空機11機、エンジン22台で稼働している。ガスタービンなどを含めると、IoTで接続する同社製の機械製品の台数は2017年9月時点で「約1000台に到達した」(村野執行役員)。半年後の2018年3月には1200台とさらに2割増やす。好調の裏には、統合したIT部門の活躍がある。

IoTの全社展開に「第1」が必要に

IHI製の航空機エンジンを整備している様子
IHI製の航空機エンジンを整備している様子
画像提供:IHI
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 IHIの機械製品全てをIoTで接続するには、全社共通のシステム基盤を整備する必要があった。統合したIT部門は、この基盤の構築と運用を担う。

 国内のITベンダーが提供するクラウド基盤にシステムを集約し、その上に各ビジネスユニットと共同でIoTアプリケーションを内製している。分析や可視化のツールは可能な限り共通化し、運用の負荷を低減する。

 IHIはシステム基盤とアプリケーションを総称して「ILIPS(IHI group Lifecycle Partner System)」と呼ぶ。全社共通システムの構築・運用に長けた第1と、事業部門との連携に長けた第2の人材なしには、ILIPSの開発は立ち行かない。

図 IHIが提供する航空機エンジンの運用支援サービス
図 IHIが提供する航空機エンジンの運用支援サービス
IoTで機械製品の整備が進化
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 村野執行役員は「データの可視化や分析に長けた第1のIT部門との統合が、全社的なIoTサービスの強化にどうしても必要だった」と、決断の背景を振り返る。