2017年10月13日、東京ビッグサイトで開催した「ITpro EXPO 2017」で、「分野でこんなに違う求人事情~エンジニア転職の今~」と題した講演が行われた。講演には、パソナ パソナキャリアカンパニー 人材紹介事業部門 IT統括部 キャリアアドバイザーの遠山 有子氏と、日経HR メディア営業部マネージャー 日経TECHキャリア担当の松本 恭子氏が登壇。エンジニアの転職に関する最新事情について語った。司会はITproの西村岳史。

パソナキャリアの遠山有子氏と日経HRの松本恭子氏
パソナキャリアの遠山有子氏と日経HRの松本恭子氏
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 講演は司会から登壇者に質問する形で進められた。

 「そもそも何を理由に転職しているのか、傾向はあるか?」という質問にパソナキャリアの遠山氏は、人それぞれではあるものの「やっぱり多いのはキャリアアップ」とし、今の会社では上の役職が詰まっていて上がるのが難しいと感じているなどの具体例を挙げた。「今の職場ではもうやりきった。新しいことにチャレンジしたい」という人も「意外に多い」(遠山氏)という。

 「IT人材不足の理由は?」との問いには、ビジネスでのIT活用が広がっていること、その一方でITエンジニアを志望する若い人がそれほど多くないことを挙げた。では、具体的にどういった人材が足りないのか。強く求められている人材の例として遠山氏と日経HRの松本氏が口をそろえて言及したのがセキュリティエンジニアだ。

 2020年には20万人弱のセキュリティエンジニアが不足する恐れがあるという経済産業省の調査結果もある。企業の中途採用では即戦力が求められる傾向が強いが、「エンジニア経験があってセキュリティに興味があるなら育てたいという企業も出てきた」(遠山氏)。

 「転職に有利なスキルは?」という質問について遠山氏は、セキュリティ関連やSAPといったメジャーな資格は大体プラスになるとする一方で、「以前よりも『人柄』が重視される傾向がある」とした。

講演の様子
講演の様子
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 一昔前は、高いスキルを持っていたり、それまで所属していた企業の評価が高かったりすれば、それだけで採用に前向きになる企業も多かった。ところが最近は、顧客との折衝やチームをまとめるときのコミュニケーション能力を評価する企業が増えているという。

 「35歳を超えたら途端に転職が厳しくなる」という、いわゆる「35歳転職限界説」はあるのか。これについて遠山氏は「あまり関係ない」とした。そもそもIT分野では責任者クラスを求める案件があるし、若手を積極的に採用してしばらくたった企業が、若手を取りまとめるマネジャークラスを募集するケースもあるからだ。

 ただし、「年齢なりに積み重ねてきた業務知識をアピールすることが前提」(遠山氏)ではある。日経HRの松本氏は建設分野に言及。人材不足もあり、技術があれば70歳を超えても採用が決まるとした。

 「10年前と転職の仕方が変わったか?」との質問の回答で出てきたのは、転職回数の多さがデメリットになりにくくなってきたことと、国内企業における人材のグローバル化だ。以前は、過去に3回転職していたらお断りなど機械的に判断されるケースもあったが、現在は応募者の経験の一貫性を考慮することが多くなった。また、応募者の国籍を問わない求人も増えているという。