2017年10月13日、東京ビッグサイトで開催中の「ITpro EXPO 2017」でグーグル・クラウド・ジャパンのGoogle Cloud シニア アカウント エグゼクティブの勝谷北斗氏が登壇。グーグルが「モバイルファーストから『AIファースト』へ」と完全に舵を切っていることを説明。さらに「ビジネスを成功に導くGoogle Cloud~G Suiteと機械学習の活用事例~」と題した特別講演にはLCCのPeach Aviation 人事・イノベーション統括本部 イノベーション統括部長の前野純氏が登壇。G SuiteとAPIの組み合わせで業務効率を高めた取り組みを紹介した。

Peach Aviation 人事・イノベーション統括本部 イノベーション統括部長の前野純氏
Peach Aviation 人事・イノベーション統括本部 イノベーション統括部長の前野純氏
(撮影:中村 宏)
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 勝谷氏によればグーグルは現在、検索サイトのほか、YouTubeやGoogleマップなど「10億人以上のユーザーを要するサービスが7つある」という。勝谷氏は、グーグルがこれらサービスを全てクラウドで提供してことに触れ、さらに「これこそがグーグルの強み。『10億人の集合知』を活用し機械学習の精度を飛躍的に向上させ、その機能をクラウドで提供することで誰もが手軽に利用できるにしている」と強調した。

グーグル・クラウド・ジャパンのGoogle Cloud シニア アカウント エグゼクティブの勝谷北斗氏
グーグル・クラウド・ジャパンのGoogle Cloud シニア アカウント エグゼクティブの勝谷北斗氏
(撮影:中村 宏)
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 グーグルでは、膨大なデータを音声認識エンジンや翻訳エンジンなどに活用し、高精度な学習済みモデル(API)として提供している。これらのAPIをグーグルでは働き方改革やコミュニケーションの活性化のためのサービス群であるG Suiteと組み合わせて活用できるようにしている。

 勝谷氏は、G Suiteを活用した事例としてPeach Aviationの前野純氏にマイクを渡し、降壇した。

G Suiteで運用コストを40%削減

 続いて登壇した前野氏は、Peach Aviationの事業概要を紹介し、「現在、全てのシステムをクラウドで構築している『100% Cloud Based』の企業である」と説明した。しかも、前野氏によると社内システムは「SaaSとパブリッククラウドでほとんどを構築し、ほんのわずかプライベートクラウドによるシステムがある」という。つまり、パブリッククラウドをベースに「わずか10人のシステム担当者で、保有航空機数19機、1日当たり最大100便、従業員1300人の企業を維持している」(前野氏)のだ。

Peach Aviation 人事・イノベーション統括本部 イノベーション統括部長の前野純氏
Peach Aviation 人事・イノベーション統括本部 イノベーション統括部長の前野純氏
(撮影:中村 宏)
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 Peach Aviationにとって、クラウド活用による業務の効率向上は、極めて重大な意味を持つという。前野氏は「LCCと聞くと、多くの人は『安全性を犠牲にして』低価格を実現しているという。しかし、現実は違う」と強調。社内の業務効率を向上し、生産性を高めることこそが価格競争力の源泉になっていることを示した。

 前野氏は、G Suiteの導入により社内システムにおける「セキュリティとサーバー管理はグーグルに任せることができた。それによりサーバーのバッヂ処理などの夜勤もなくなったほか、ランニング費用を40%も削減できた」と導入効果を説明。

 さらに、今後の展開としてコンタクトセンターに「Speech API」を導入して、運行状況の案内システムを構築する。典型的な問い合わせはAIが回答するようにしたい」と説明。「業務を効率化したり生産性を高めたりするアイデアはたくさんある」と語り、「グーグルが提供しているさまざまななAPIを活用し、どんどん実現してきたい」と方向性を示した。

Speech APIを活用した自動応答システム
Speech APIを活用した自動応答システム
(撮影:下玉利 尚明)
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 講演の最後に前野氏は、パブリッククラウドの活用で懸念されることの多い「安全性」にも言及。「創業から6年間継続してパブリッククラウドで事業を拡大してきた。パブリッククラウドがなければ、今のPeach Aviationは存在しない」と述べ、続けて「多くの企業にとってパブリッククラウドを利用しない未来は想像できないだろう。その際にG SuiteやAPIの活用も検討するとよいだろう」と語り、講演を終えた。

■変更履歴
社名、製品名の一部に誤字・脱字がありました。また、一部コメントの話者に誤りがありました。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2017/10/16 11:50]