日立製作所と日立超LSIシステムズの日立グループ2社は、2017年10月11日から13日まで東京ビッグサイトで開催している「ITpro EXPO 2017」で、深層学習(ディープラーニング)を使った画像認識やデータ解析の各種サービスを出展中だ。

 日立超LSIシステムズは、カメラの画像や映像から物体を識別してカメラの設置場所からの距離も推定できるソフトウエア技術を参考出展した。学習次第で識別した物体の種類も判定でき、カメラ位置からの距離も推定する。

 一般的な深層学習の技術を使っているものの、物体を識別する運用段階で必要な計算処理量を抑えるなどの独自の工夫をしたという。展示では監視カメラに組み込んだ小型のボードコンピュータだけで、映像から車や人、信号機を識別して、映像上に推定の距離付きで枠に囲むというデモを披露した。ボードコンピュータは米NVIDIAがAI処理を想定して開発した組み込み用途向けGPU(グラフィックス処理プロセッサ)の「Jetson TX2」を搭載したものを採用している。

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 学習段階では人や車など識別させたい物体ごとに1万枚の写真を教師データとして用いたという。物体を認識したら、物体が地面にあるという前提で、画像上で物体が接地した位置とあらかじめ設定したカメラ設置の高さなどを基に、幾何学的に距離を計算するという仕組みだ。

 単眼で撮影したカメラ映像だけで物体識別と測距ができるソリューションとして、2018年の製品化を予定している。企業の需要に合わせてデータを学習させて、識別エンジンをソフトウエアで納入する販売方法を検討している。

 日立製作所は、施設の損傷状況を画像や映像から判定できる保守点検・検査業務向けの画像認識サービスを出展した。亀裂が入ったコンクリート壁やサビで塗装が禿げたガードなどの損傷した施設の外観を学習させて、AIで自動的に劣化した施設を判定させる用途を想定した。車に画像認識のシステムを載せて、走行しながら施設外観の映像を撮影して、その場で劣化した施設を地図上でマッピングする使い方ができる。

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 日立製作所はIoT(インターネット・オブ・シングス)で高度なデータ分析を実現するサービス「IoTデータモデリング」のデモも披露した。既に工場や店舗などにIoTを導入しながら十分なデータ活用ができていないビジネスの現場に向けたサービスという。

 日立が顧客企業からIoTデータを預かり、ディープラーニング技術を用いて発見できていなかった相関関係や規則性を見つけ出し、データの活用方法を指南する。例えば故障や不良品発生、トラブル発生に関係が深いデータを抽出して、運用段階で自動的にアラートが出せる仕組みづくりを導く。

 ある製造業の導入例としては、工場の3カ月分の稼働データを預かり、工程ごとにバラバラだったセンサーデータを正規化したうえで、AI分析から不良を6種類に分類できる、という不良発生のモデルを作成。6種類の不良について発生の条件を特定した。この条件で監視ルールを設けたところ80%以上の的中率を達成でき、歩留まりを向上できたという。

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