2017年10月12日、住友生命保険人事部の小野寺 成子氏は、東京ビッグサイトで行われている「働き方改革 2017」にて『「いきいきと働ける会社」の実現に向けた長時間労働抑制の取り組み』と題した特別講演を行った。

(撮影:菊池 一郎、以下同じ)
(撮影:菊池 一郎、以下同じ)
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 同社は従業員約4万3000人のうち約9割が女性であり、その半数に子どもがいる。また、全従業員のうち74%が営業職員、残りの16%が職員という、やや特殊な人員構成となっている。しかし、小野寺氏は冒頭に「違う業種・違う世界の話ではございません」とし、これまで同社がどのように長時間労働の撲滅に取り組んだか、その経緯を語った。

 同社では、職員のうち総合職として働く社員は、一般の会社の総合職と同じように夜遅くまで働く風潮があった。また、勤務体制を自分で決められる営業職員にしても、ほぼ休みがない労働時間制で働いており、この意味では他の会社よりも長時間労働への対応が求められていた。

 これに加えて、昨今では商品と販売チャネルの多様化や規制・監督の強化などによる生命保険マーケットの変化に応じるため、関連の仕事量が増えている状況があった。小野寺氏は「これに対応するため、単なる長時間労働ではなく働き方そのものを見直すことが必要になった」と長時間労働を抑制する活動の必要性を説明した。

 同社の取り組みとして衝撃を受けたのは、その施策に“強制的”な仕組みが目立つことだ。たとえば、同社では2003年4月から就業規則における就業可能時間を朝7時~夜10時に定めた。現在はこれが1時間短縮され夜9時までとなっているが、遅くとも夜8時までの退社を促す方向で運用されているという。

 PCの使用に関しても同様で、基本的には夜8時までにログアウトすることを奨励している。例外として所属長の許可を得て夜9時まで使うことはできるが、それでも延長して使えるのは1時間ということになる。

 PCの利用制限は、“強制ログアウト”という非常に分かりやすい方法をとっているという。夜8時には、作業中のPCも含めPCが自動的に社内ネットワークから遮断される。しかも、もしその時に未保存のデータがあっても、保存はされないという。

 同社の場合、イントラネットから遮断されるということは、メールやインターネットはもちろん、エクセルなどのOAソフトも使用できなくなることをさす。もちろん遮断の前には画面にメッセージをポップアップ表示させるが、このような強制的な施策によって、長時間の労働時間を抑制しているという。

 このように時間によって社内のPCが使えなくなると、持参したUSBなどを使って自宅で作業する社員が現れそうだが、住友生命保険ではそれも不可能だ。同社では、個人が持ち込んだUSBなどのメディアが社内のPCで使えない。必要があってデータを社外に持ち出す場合は、所属長の許可を得て会社が支給するUSBを使う決まりだという。しかも、このUSBは事前に指定したデバイスでしか読めない仕様となっている。

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 この他、同社には所属長が全メールを開き、その内容をチェックする体制もある。これは、長時間労働はもとより、セキュリティの確保にも役立っているようだ。

 PCの強制シャットダウンを導入した当初、作成中のデータが失われることから社内で悲鳴が発せられることもあったと小野寺氏は振り返る。しかし、現在はそのようなことはなく、長時間の労働もなくなっている。

 この他、同社では休暇の取得状況や残業時間の上限をチェックし、画面上にアラームとしてメッセージ表示する仕組みも導入している。さらにこれらのデータは実績として管理され、長時間労働が懸念される従業員の健康確認や所属長への改善指導にも使われているという。

 冒頭、小野寺氏が触れたように、これらの施策は保険業界だけでなく、一般の企業でも利用できるものだ。最後に、小野寺氏は同社が取り組む新しい保険の紹介に触れ講演を終えた。