2017年10月12日、経済産業省 商務情報政策局 審議官の前田 泰宏氏は東京ビッグサイトで開催されている「ITpro EXPO 2017」にて「2020年に向け変貌する情報セキュリティと企業に求められる対応」と題した特別講演を行った。

(撮影:菊池一郎)
(撮影:菊池一郎)
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 前田氏は、「IoTとかAIとかビッグデータという言葉にはいろいろな概念が入っているので、議論しても組み立てができずあいまいになり、議論の進展がなく疲弊してしまう」と指摘。「キーワードを聞いて分かった気になっていても、実はちゃんと認識していないという罠にはまっている」ことがあるという。

 そこで行政やメディアサイドに、きめ細かな議論をする「言葉のインフラ」を作ってほしい、という。

 「ITではOTの世界の問題を直接解決することはできず、その間をつなぐものが必要」(前田氏)とウクライナで起きた2015年と2016年のサイバー攻撃事例を挙げた。2016年は電力システムのダウンとなってしまったので、ITだけでは問題を解決できないという。

 サイバー攻撃の影響が現実に及んだ際にはITとOTの協力が必要となるが、現実にはITとOTの両方に精通した人はほとんどいない。さらに組織内でも言葉が違う問題があるようにIT専門家とOT専門家では言葉が違うので、そこをつなぐものがなければ議論が深まらないという問題を指摘。議論がかみ合う仕組みを作る必要性を説いた。

 IoTで生み出されるデータについては、「データを集めることと商売することは矛盾関係になることもある」(前田氏)とみる。そのうえで「データ以外の補助線として、Z軸が必要」であり、そのZ軸に何を設定するかで事業モデルが決まり、XY平面では矛盾してもZ軸で融合させることが行政や企業がチャレンジするポイントだという。

 「IoTやビッグデータいう言葉は目的ではなく、目的を何に設定するかが重要になる」(前田氏)という。どういうデータを使うのかという議論は次のステップであり、まずは新サービスの内容、つまりZ軸を定める議論を先行させるべきとした。