あらゆる企業で「デジタルトランスフォーメーション」への対応が求められている。そして、デジタル化したマーケティングで従来のビジネスを変えた企業が相次いでいる。そのときにITエンジニアができることを考えよう──。

 2017年10月11日から13日にかけて日経BP社が東京ビッグサイトで開催している「ITpro EXPO 2017」のメインシアターで、ITpro Active副編集長でITproマーケティングを担当する松本 敏明氏が、「ITエンジニアが理解しておくべきデジタルマーケティング最新事情」というタイトルで講演した。

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 まず松本副編集長は、「なぜデジタルマーケティング」が重要なのかを、「デジタルトランスフォーメーション」という言葉を引きながら解説した。米調査会社のIDCが公開した資料を引きながら、デジタルトランスフォーメーションの必然性を「デジタル技術を組織や運営、ビジネスモデルの革新に結びつけて、ビジネスの成長と発展の新しい方法を創り出すもの」とした。

 その上で、「顧客の詳細な動向がデジタル技術で把握可能になり、顧客の購買意欲を高め、最適な方策でアプローチすることまでをITで支援できるようになった」と指摘した。海外に比べて日本では立ち遅れがちのマーケティングにデジタルの概念を持ち込むことで、企業そのものの変革を可能にする企業が増えていると読み解いた。

 ここで重要になるのが「『営業部門』と『マーケティング部門』だけでなく、『IT部門』と『マーケティング部門』の連携である」と松本副編集長は話す。マーケティングを活用した企業の変革に、IT部門の関与が欠かせないというのだ。

 日本ではマーケティング活動を自動化する「マーケティングオートメーション」(MA)の有力ベンダーが増えた2014年は「MA元年」と呼んでいる。それから3年、日本企業ではMAとSFA(営業支援システム)のシステム的な連携が重視されてきた。さらに企業(アカウント)単位でのアプローチを進めるABM(アカウントベースドマーケティング)という考え方が広がり、顧客データのマネジメントが重視されている。「そしてこの仕組みを支えているのがデジタルのプラットフォームである」という。

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 松本副編集長は、二つの視点からデジタルマーケティングとITの係わり合いについて解説した。

 一つは有力なIT企業が、デジタルマーケティングを全面的に取り入れた変革に着手しているという視点である。NECやKDDI、日商エレクトロニクスといった日本企業の、デジタルマーケティング実践の現状のほか、米シスコシステムズが全世界に展開しているパートナー支援のためのプラットフォームを、自身の取材に基づいて紹介した。「皆さんがよくご存知のIT企業がデジタルでの変革を始めている。あなたの会社でもその取り組みが進んでいるのではないか」(松本副編集長)と指摘した。

 もう一つの視点が、世界的なITベンダーがデジタルマーケティングを核にした最新技術を公開し、ユーザー企業にデジタル変革を訴えているという事実である。セールスフォース・ドットコムやアドビ システムズ、そしてオラクルといった有力ベンダーが、MAとSFAとの連携による業務改革に乗り出していると指摘。さらに各社がここに最新の人工知能(AI)を取り入れることで、「企業のビジネスの進め方を一変させようとしている」(松本副編集長)状況を解説した。

 松本副編集長は「既にMarTech時代に突入している」という。MarTechとはMarketingとTechnologyを融合させた造語で、日本ではそれほどなじみはないものの、米国ではよく使われている。既にこの分野でも世界ではプラットフォームの戦いに突入していること、そしてユーザー企業はデータマネジメントの巧拙を問われていること、そしてアカウントに企業として面的に接触するABMがさらに加速していることなどを解説した。

 その上で松本副編集長は、「高速かつ効果的なビジネス展開を目的に、自社の活動にデジタル技術を取り入れよう。そしてデジタルで進化する顧客に向き合うマーケティングの現場に、IT部門が培ったテクノロジーの知見・経験を加えることで、自社のビジネスに貢献しよう」と訴えて、講演を締めくくった。