ビッグデータは時に「宝の山」と呼ばれる。その意味で、国内最大級の宝の山を保有している企業の1つは、NTTドコモだろう。
通信会社のドコモが持つ顧客情報や、携帯電話やスマートフォンなどの利用履歴はもちろんのこと、最近では「dマーケット」に代表される各種コンテンツのサービス利用履歴やポイントサービス「dポイント」など、日々蓄積されていくデータはまさに巨大だ。しかもドコモの場合、サービス利用者から毎月料金を徴収する仕組みが整っているため、データの精度が極めて高い。いい加減な顧客情報や利用履歴は存在しない。
他社から見れば、うらやまし過ぎるドコモのビッグデータ。このデータをドコモ自身はどのように活用しているのだろうか。
どんなに宝の山が大きくても、ビッグデータを分析し、そこから新たな知見を得て、次のアクションにつなげられなければ、それこそ「宝の持ち腐れ」になる。この特集では、普段ほとんど語られることがない、ドコモのデータ分析現場に潜入を試みた。
7年がかりで「データ分析仲間」を増やす
2017年8月末、ドコモ東京本社の会議室に100人近い社員が続々と集まってきた。全国の支社とはWeb会議システムでつなぎ、遠隔からも200人ほどが参加。合計で約300人が半日かけて、熱い議論を交わした。
開かれたのは「分析事例発表会」。2009年にこじんまりと始まったデータ分析事例の共有の場が、7年半後の今は、多いときには約450人が出席する大イベントに成長した。
ちょうどこの日は、分析事例発表会を始めてから、通算30回の節目だった。これまで年3~4回のペースで開催し、全国の現場で実施されているデータ分析とその成果を発表会で披露し合い、社内で共有してきた。ほかの支社や部署でも使えそうなデータ分析はどんどんまねをして横展開し、成果を全社に広げていく。
分析事例発表会を立ち上げ、リーダーとしてデータ分析の輪を社内に広げてきた、情報システム部の白川貴久子情報戦略担当部長は「データ分析の“仲間”が数百人規模まで増えたことが、何よりの財産。データ分析の対象領域も、これまではスマホの販促など販売分野が多かったが、ここ数年でコンテンツビジネスなど当社の新領域にも広がった」。
白川担当部長が率いる「情報戦略担当」は一言で言えば、ドコモのデータ分析専門組織だ。全スタッフを含めると、約120人もの担当者が在籍する大所帯である。このうち約70人が実際のデータ分析担当というから、その人数の多さにまず驚かされる。