ITエンジニアが仕事で書く文章の大半は、主張や提案のほか、評価や判断などに関して説明して、相手を説得する(主張などを受け入れてもらう)論述的な文章である。ここでは、ユーザー部門のマネジャー宛てに、「サーバーのOSを更新したいので承認してほしい」という内容の論述的な文章を作成する場合を例に、「適切な情報」をどのように書いて並べればよいのかについて説明する。

 論述的文章では、まず気をつけなければならないのは「言いたいこと(主張)だけ書いたのではダメ」な点だ。次の図に「悪い例」として示した文章は、書き手が言いたいことだけしか書かれていない。これでは、相手は「なぜ、OSを更新する必要があるのか」がさっぱり分からない。承認を求められた読み手は、判断を下しようがない。

「適切な情報」を書いて並べる
「適切な情報」を書いて並べる
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 何らかの主張をする場合は、その理由も併せて示す必要がある。書かなくても推察すれば分かるはず、聞かれたら口頭で補足すればよい、などと考えているなら、今すぐに考えを改めよう。

 理由を書き加えたのが、前出の図で「改良した例」として示した文章である。元の文章に比べたらかなりマシだが、まだ問題が二つある。

 まず、サポート切れに伴ってOS更新が必要になる理由が書かれていない。これを読む人がITエンジニアなら、OS更新の必要性についてわざわざ説明する必要はないだろう。サポート切れのOSを使い続けるのは危険との共通認識があるからだ。しかし、読み手はユーザー部門のマネジャーなので、共通認識を持っていることを期待できない。「OSのサポートが切れたら」なぜ「OSの更新が必要か」という理由(論拠)についても書く必要がある。

 もう一つの問題は、サポートが切れるまで放置していた理由の説明がないこと。「OSのサポートが切れたら」「OSの更新が必要」というストーリーを理解してもらえたとして、今度は「ではなぜ、今まで放置していたのか。なぜこのタイミングでやるのか」という疑問を抱くかもしれない。それに対して、前出の図の「さらに改良した例」のようにあらかじめ答えを用意しておく必要もある。

 うまく説明して、サーバーOSの更新を承認してもらうなど相手を説得する文章とするには、次の図のような構成にするとよい。論述的文章を書く際は、最初にこうした構成図を書いておこう。

サーバーOSの更新を承認してもらう論述の構成
サーバーOSの更新を承認してもらう論述の構成
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