海外IT事業の将来をIoT(インターネット・オブ・シングズ)に託した日立製作所。東原敏昭社長兼CEO(最高経営責任者)は、「(IoTプラットフォームである)『Lumada』によって、あらゆるモノをサービスとして提供する『XaaS(エックス・アズ・ア・サービス)』を実現する。Xはソフトウエアに限らない。鉄道やエネルギー分野の製品も含む」と言い切る。IT事業だけでなく、日立の全ビジネスを変革するのが東原社長の狙いだ。

 東原社長がLumadaに注ぐ熱意は相当なものだ。同社が2017年9月下旬に米ラスベガスのホテル「マンダレイベイ」で開催したユーザーカンファレンス「Hitachi NEXT 2017」では東原社長自らが基調講演に登壇し、「日立ヴァンタラ」の設立と、日立がIoTやデータ分析にかける思いを自らの言葉で語りかけた。当然ながら英語での講演である(写真1)。

写真1●ラスベガスで講演する日立製作所の東原敏昭社長兼CEO
写真1●ラスベガスで講演する日立製作所の東原敏昭社長兼CEO
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 「日立は100年を超えるOT(オペレーションテクノロジー、制御技術)の歴史と、50年を超えるITの歴史を有する。OTとITを融合して、顧客にエンド・ツー・エンドでバリューを提供する」「OTとIT、様々な産業機器、様々なシステムを相互に接続する、オープンでセキュアなプラットフォームがLumadaだ」。東原社長は米国人を中心とする聴衆にそう訴えた。

 日本のITベンダーが米国でユーザーカンファレンスを開催し、本社のトップが英語で講演をするのは珍しい。東原社長はなぜそこまでLumadaに熱心なのか。Lumadaに込めた狙いや、日立自身の「デジタル変革」について東原社長に聞いた。

Lumadaを開発した狙いは。

 デジタル化の時代のなかで、日立全社が活用する「プラットフォーム」が必要だと考えて開発したものがLumadaだ。従来の情報通信カンパニーだけが使うサイロ化したシステムではない。鉄道もヘルスケアも電力も、あらゆるBU(ビジネスユニット)がLumadaを活用する。

 同時にLumadaは顧客の経営課題を解決する役割も担っている。顧客がどのような経営課題を抱えているのか、顧客の現場で顧客と一緒に課題を突き止めて、顧客にとってのKPI(重要業績評価指標)を設定し、そのKPIを実現するためのソリューションをLumadaを使って実現する(写真2)。

写真2●日立製作所の東原敏昭社長兼CEO
写真2●日立製作所の東原敏昭社長兼CEO
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 当社はこれまで、「NEXPERIENCE(ネクスペリエンス)」や「EXアプローチ」など、様々な方法論を開発・実践してきた。Lumadaには、そうして見つけた課題や解決策が正しいかどうかを検証する「デジタルシミュレーター」としての機能が備わっている。

 デジタルシミュレーターで実施する「デジタルPoC(概念実証)」によって、仮説が正しいと分かれば、Lumada上に顧客のアウトカム(成果)を最大化するソリューションを構築する。Lumadaによって、顧客の課題発見から、解決策の提供まで一貫して取り組める体制が整った。

IoT事業を海外展開するうえで必要なことは。

 Lumadaを売るという発想はしない。Lumadaを使って顧客のアウトカムを最大化する、データから価値を生み出す手伝いをすることを第一に考える。